2年間、患者さんに来院頻度を正直に提案できなかった。「忙しい方に迷惑をかけてはいけない」そう言い訳していたけれど、本当は違う。自分の技術にそれだけの価値があるかどうか、確信が持てなかったのだ。
「週2回」が言えなかった頃
開業から2年が経ち、月商89万円まで伸びていた。予約は埋まり、患者さんとの関係も温かかった。客観的に見れば、うまくいっていた。
それでも、治療中にずっと引っかかっていることがあった。「本当は週2回来てほしいのに、それが言えない」という、小さな、でも消えない感覚。
「忙しい方に無理を言うのは申し訳ない」「断られたら、せっかく築いた信頼が崩れるかもしれない」。そういう言い訳で自分を納得させていた。
でも今、正直に言える。それは全部、後付けの理由だった。
「自分の技術が、週2回来るだけの価値を持っているかどうか、確信が持てなかった」——それだけだった。
患者さんに「効果はありますか?」と聞かれた時、僕はいつも「効果が出ると思います」と答えていた。「確信があります」ではなく、「思います」。この一言の違いに、僕の迷いがすべて詰まっていた。
3年目の年明け、4つを一度に変えた
前年の大晦日、兄から「売上の仕組み=カルテ枚数×単価×来院頻度」という公式を教わった僕は、3年目の年明けに、大きな決断をした。
やることは決めた。4つを、一度に全部変える。
- 定休日を1日増やして「週休2日」に
- 一日の労働時間を「8時間」に短縮
- 施術時間を「30分」に統一
- 来院頻度の提案を「週に2回」に徹底
労働時間を大幅に減らしながら、売上は倍増させる。端的に言えば、無謀な賭けだった。
しかし「やらなければ何も証明できない」。2年間、89万円の壁の前で躊躇してきた自分に、いい加減けりをつけたかった。
改革初月、パソコンに表示された数字
改革を始めた翌月、2月の売上を集計した。
パソコンの画面に表示されていた数字は。
週休2日・8時間労働という、今までより楽な条件で。
89万円の壁は、あっさりと、消えた。
ついに、100万円の壁を突破した。しかも、労働時間を減らした状態で。
「よし、第一関門はクリアだ」。確かな手応えと、次のステージへの高揚感があった。
翌週末、僕は車を1時間走らせてアウトレットモールに向かっていた。以前からほしかったアークテリクスの冬のコート。20万円以上するそのアウターを、躊躇なく手に取った。「自分へのご褒美であり、新しいステージに立つ自分への鎧だ」、そんな誇らしい気持ちだったのを覚えている(笑)。
110万円が証明した、本当のこと
でも、この110万円が証明したのは、「数字」だけじゃなかった。
「週2回来てください」という提案を受けて、実際に週2回通ってくれた患者さんがいた。その患者さんたちが、週1回だった頃よりも確実に、早く回復していった。
この事実が、僕に確信を与えてくれた。
こう言い切れるようになったのは、提案する前じゃない。提案して、来てもらって、結果が出た後だった。確信は、やった後にしかやってこなかった。
2年間、「自信がついたら提案しよう」と思っていたのは、完全に逆だった。提案するから、結果が出る。結果が出るから、確信が生まれる。その順番は、変えられない。
確信は「やった後」にしか来ない
治療家の多くが「自信がついたら、ちゃんと提案しよう」と思っている。
でも、その日は永遠にやってこない。「自信がある状態」は、勉強や経験の積み重ねで少しずつ育つものに見えて、実は、患者さんの反応と治療結果を積み上げることでしか、本当の確信にはならない。
この順番は変わらない。確信は「やった後」にしか来ない。
「自分に自信がない」と感じているなら、それはまだ提案していないだけかもしれない。技術の問題ではなく、一歩踏み出す前の状態なだけかもしれない。
もちろん、すべての患者さんに週2回が必要なわけではない。症状が落ち着いている方、通院が難しい方は週1回でも月1回でも構わない。でも、本当に症状がつらくて早く回復したい方には、週2回以上から始めてもらうことが、今の僕のベストアンサーだ。
だから今は、そのまま正直に伝えている。「症状をしっかり安定させるために、最初の集中期間は週2回がベストです」と。
今日、一人に言ってみてください
「週2回来てください」と言えない理由は、断られる恐怖だけじゃないと思う。
「週2回来る価値が、本当に自分にあるのか」という問いに、まだ答えを持てていないのかもしれない。
でも、その答えは、自分の頭の中にはない。患者さんの反応と、治療の結果の中にある。
一度だけ試してみてください。「状態をしっかり安定させるために、最初の2週間は週2回来ていただくのがベストです」——この一言を、次の患者さんに。
断られることもある。でも、「わかりました、来ます」と言ってくれる患者さんもいる。そして、その患者さんが回復した時、初めてあなたの中に「根拠」が生まれる。
技術を信じる根拠は、最初から持つものじゃない。一歩踏み出した先に、積み上げていくものだ。

