
自立の教科書 第2章 / 02 of 03 / 全文無料
月商200万円を追いかけていたときが、
いちばん苦しかった
月商100万円を超えて、次は200万円だと考えました。天井は140万円でした。でも問題は、届かなかったことではありません。その数字が、そもそも自分の幸せと違っていたのです。
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お金のブロックが外れると、売上は伸び始めます。僕もそうでした。50万円を超え、そのまま月商100万円を突破しました。嬉しかったです。
そして次に、こう考えました。「次は200万円だ」。
月商200万円を目標にして、140万円で止まった
一時期、僕は治療院の月商を200万円に置いてやっていました。開業3年目くらいからでしょうか。3年目、4年目、5年目あたりの時期です。
結果として、最高月商は140万円でした。実売上です。回数券の販売額ではなく、実際に患者さんが来院して発生した売上のことです。
売上がいちばん高い時期が、いちばん苦しかった
この3年目、4年目、5年目というのは、売上でいえばいちばん高い時期でした。
でも、記憶としては苦しいんです。
スタッフとの関係もギスギスしていました。患者さんとの間にも、少しギスギスしたものが出ていたなと思います。
結論として、治療院の収入だけで200万円というのは、自分には苦しかった。自分にとっては幸福感が出づらいところだったのかな、といま振り返って思います。
何が嫌だったのか
具体的に何が嫌だったのかというと、こういうことでした。
来院頻度はすごく大事にしていました。だから、キャンセルをされたときの自分の感情が嫌だったんです。
受付スタッフが来院頻度の説明を思ったよりしてくれないとか、紹介カードをお渡しするタイミングが少しずれるとか、そういうことでイライラしたりする。
本来は、患者さんの身体が良くなるためにやっていることなんです。実際、来院頻度の設計は良くなるために必要なことです。
それがどこかで、そうではなくなっていた。200万円という数字のほうに、僕自身が囚われていたなと感じています。
数字に囚われると、目の前の人のためにやっていたはずの行動が、数字を守るための行動にすり替わります。すり替わっていることに、渦中では気づけません。
苦しかったのは、比べていたからでした
もうひとつ、エピソードを話します。
僕は青年会議所に入っていた時期があります。40歳までの団体です。そこでは、自分よりはるかに経営規模の大きい社長の方々と一緒に活動する機会がありました。
活動中は、まったく何とも思わないんです。全員が同じ立場で動いているので。
苦しかったのは、そのあとの雑談の時間でした。
いま振り返って思うのは、経営規模がその方々に届いていなかったこと自体が原因ではない、ということです。届いていなくても、自分がその人たちと同じような感覚でいられたなら、居心地は悪くなかったと思います。でも、自分はそうはなれなかった。
年商が何百億、何千億という人たちと一緒にいると、やっぱり苦しかった。そうではない方たちとは、別にそんなこともない。
そこで気づきました。自分が居心地よくいられる人たちと同じくらいの収入になってくると、幸福感が出やすいのかな、と。
近所の人の収入と、自分の幸福度
この「周りと比べてどうか」という部分も、実際に調べられています。
2005年に発表された、ラットマーという経済学者の研究です。タイトルは「Neighbors as Negatives(負としての隣人)」。掲載誌は Quarterly Journal of Economics。
自分の収入を同じ条件に揃えたうえで比べると、近隣の人たちの平均収入が高い地域に住んでいる人ほど、自己申告の幸福度が低いという結果でした。自分の絶対額ではなく、周りとの相対的な位置が効いているという話です。
僕にも、その嫌いはあると思います。
順位を選ぶか、額を選ぶか
もうひとつ、1998年に発表された調査があります。ソルニックとヘメンウェイの研究です。
1995年2月、ハーバード公衆衛生大学院の教員・学生・職員257人に、こういう選択肢を出しました。
- A:自分の年収は5万ドル、周りの人は2万5,000ドル
- B:自分の年収は10万ドル、周りの人は20万ドル
額だけを見ればBのほうが倍です。それでも、およそ半数がAを選びました。
この研究では、こうした順位に関わる関心のことをポジショナルと呼んでいます。なお、この調査では項目によって差が出ていて、順位への関心がいちばん強かったのは容姿と上司からの評価。いちばん弱かったのは休暇の長さだったそうです。
面白いですよね。そして、なんだかんだ言っても、みんな相対的に生きているんだなと。僕も含めてです。周りと比べて自分はどうかというのを、無意識のレベルでずっと思っているんだなと感じています。

僕が削りたくないもの、それは時間です
いま現在の僕はどうかというと、収入はもう少し欲しいのが事実です。治療院の収入がもう少し上がってほしいというのもありますし、治療以外の収入を上げていきたいというのもあります。
ただ、削りたくないところがあります。時間です。
家族と一緒に過ごす時間があること。家族と一緒にスポーツができること。僕はライフセービングというスポーツを家族とやっているので、それができる時間がずっと確保できたうえで、収入をいかに高めていくか。そこが自分にとってのテーマです。
ここがなくなったら、僕は幸せではなくなってくるのかなと思っています。
「時間を買う」と満足度の関係
この時間についても、調べられています。
2017年に発表された研究では、アメリカ・カナダ・デンマーク・オランダの4か国、6,271人を調べています(PNAS 114巻・ウィランズら)。家事の外注など、時間を節約するサービスにお金を使っている人ほど、生活満足度が高い。この関係は、収入の差を考慮に入れても残りました。
さらに実験もしていて、働いている大人に同じ金額を渡した場合、物を買ったときより、時間を節約する使い方をしたときのほうが幸福感が高くなったという結果が出ています。
2019年には、卒業前の大学生およそ1,000人を追いかけた研究があります(Science Advances・ウィランズら)。卒業の時点で「お金より時間を重視する」と答えていた人は、1年後の時点で幸福感が高かった。
「いくらあれば、自分は幸せか」を探し続ける
だから僕は、目標の置き方を変えました。
売上の最大化ではなく、自分が一番幸せになれるのは、どれくらいなのか。それを探り続けることにしたんです。
これは「稼がなくていい」という話ではありません。必要な額は、必ずあります。家族が安心して暮らせる額。設備を入れ替えられる額。学び直しにお金を使える額。休んでも回る額。そこを下回れば、当然しんどい。
大事なのは、その額を自分で決めるということです。他人の数字ではなく、自分の生活から逆算して決める。そして、決めた額を超えたときに「もっと」と反射的に足さないこと。
僕がAIを使って手に入れたのは、売上の最大化ではなく、人生の主導権でした。業者に払っていた固定費が消えた分の、お金の余白。一人でも全部回るようになった分の、時間の余白。
規模で勝つ必要はありません。大きなグループやチェーンと張り合う必要もありません。自分にとっての適正額を知っている人が、いちばん強いと僕は思っています。

今日やること
紙を1枚出して、こう書いてみてください。「毎月いくら残れば、自分と家族は安心して暮らせるか」。そして、その額を出すために必要な月商を計算してみてください。
その数字が、あなたの目標です。誰かの200万円ではありません。