
自立の教科書 第2章 / 01 of 03 / 全文無料
売上50万円に到達しない方は、
ここが欠けています
開業1年目、僕の月商は50万円を超えられませんでした。技術でも、集客でもありません。欠けていたのはお金のマインドブロックでした。それが外れた月から、50万円を超えました。
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この章は、教科書の第1章(固定費最適化)のあとに置いています。固定費を見直して、月1万円でも浮かせることができたなら、もうあなたは「変えられる人」です。自分の意思で、今の生活を小さく動かせた。この事実が、ここから話すマインドの入口になります。
「技術さえあれば食える」は、幻想でした
いきなりキツいことを言います。技術さえあれば食える。これは幻想です。僕自身、この幻想を信じ込んで、痛い目を見ました。
技術があっても、来てくれた患者さんに「また来てください」と言えなければ、売上は積み上がらない。来院数と売上が、まったくリンクしない現実を、開業初月に叩きつけられました。
僕がJリーグを辞めた日
元Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府のトレーナーを10年やりました。プロの選手の身体を毎日見て、手技の引き出しも増やしてきた。自分の技術には、それなりに自信がありました。
だから開業するとき、正直こう思っていたんです。
「自分の腕なら、どこでやっても食えるだろう」
これが、最初の勘違いでした。
初月の売上は、6万円でした
2014年1月14日、妻の地元である館山でプレオープンしました。僕自身は、この町に知り合いが一人もいませんでした。
プレオープン初日、緊張しながら待っていました。来てくださったのは、2名。「ありがたい」と「ほっとした」が同時に来た、忘れられない日です。
もちろん、ゼロの日もありました。でも正直な実感を言うと、「思ったより来てくださった」。プレオープンからの約2週間で、延べ19名(うち新規17名)が来院してくださいました。上々のスタート。そう思いました。
ところが、蓋を開けたら、初月の売上は6万円。
プレオープン期の割引メニューとはいえ、痺れる数字でした。「あれだけ来ていただいたのに、この売上?」。人数と売上は、まったく別の指標なんだと、身をもって知った瞬間です。
患者さんは来てくれた。でも売上にならなかった
誤解のないように言います。お客さんが来なかった、という話ではありません。 新規の方は、ちゃんと来てくださっていた。なのに売上は上がらない。理由はたった一つです。
「通院指導」が、できなかった。
目の前の患者さんに「来週、もう一度見させてください」と言えなかった。回数券を案内できなかった。次回の予約を、その場で取れなかった。だから1回きりで終わる方が多かった。
新規がどれだけ来ても、リピートに繋がらなければ、売上は積み上がりません。これは集客の問題ではなく、自分のマインドの問題だったと、後になって気づきました。

変えるべきマインドは、ただ一つ
マインドの話は、あれこれ散らかりがちです。でも、僕がこの12年で骨身にしみたのは、たった一つでした。
「お金をもらうのが怖い」というブロックを外すこと。
これ一つです。他のこと(経営感覚、数字の読み方、仕組み化、集客)は、全部この後の章で扱う「技術」の話。マインドは、ただこれ一点。ここが外れるかどうかで、人生が変わります。
なぜ怖かったのか
Jリーグ時代は、選手から直接お金をもらう機会がなかったんです。契約はチームと僕の間だけ。10年間、目の前の人から「ありがとう」の対価としてお金を受け取る経験が、ほぼありませんでした。
その状態で独立した僕は、患者さんから治療費をもらうことに、強い罪悪感を抱えていました。
「大丈夫ですよ」と言ってしまった話
開業1年目。肩が痛くて通ってくださっていた患者さんに、本当は「来週もう一度見させてください」と言うべき場面でした。でも、僕の口から出たのは。
「大丈夫ですよ。また何かあったら、来てくださいね」
自分でもびっくりしました。通院提案ですらない、丁寧なお見送り。お金をもらうことが申し訳なくて、その患者さんの回復を、自分から遠ざけてしまった。今思うと、あれは「患者さんのため」ではなく、「自分の罪悪感を軽くするため」の発言でした。
今も、続くチャレンジ
このマインドは、12年経った今も、時々顔を出します。たとえば新しいメニューを作るとき、値段を決めるのに毎回悩みます。「これだけもらって、釣り合うだろうか」。
そう思うたびに、自分に言い聞かせます。
「価値を正当に受け取らないと、本当に困っている人に続けて提供できない。」
これは、矯正し続けているマインドです。
もう一つの壁は、頻度が分からなかったこと
お金のブロックが一番の理由。これは間違いありません。でも振り返ると、もう一つ大きな理由がありました。「どれくらいの頻度で来てもらえばいいか、分からなかった」ことです。
Jリーグ時代は「毎日」が当たり前だった
僕はJリーグで10年、選手の身体を毎日見ていました。毎日ケアできる。毎日施術できる。これが僕の中の「普通」でした。
でも、開業して気づきます。一般の患者さんに「毎日来てください」は、費用的にも時間的にも非現実的です。じゃあ週何回? 月何回? 正直、分かりませんでした。「適切な頻度」の目安が、自分の中にありませんでした。
兄の一言で、月商50万円を超えた
1年目、僕の月商は50万円を超えられませんでした。悩んでいた僕に、兄が言ってくれたのが、これです。
「まず全員に、1週間後にもう一度来てくださいって言え。
良くなってきたら2週間に1回。
さらに改善したら、月に1回。」
正直、これは頻度としては低めの設定です。急性期ならもっと詰めたほうがいいケースもあります。でも当時の僕にとって、この決め打ちフォーマットが救いになりました。
そして、これを言えるようになった月から、50万円を超えました。
つまり僕の壁は、技術でも集客でもなく、お金のマインドブロックだったということです。それが外れたことが、50万円を突破したきっかけでした。
分からないなら、決め打ちでいい
頻度の最適解は、症状によって全然違います。でも、最適解を考え込むより「とりあえず全員1週間後」で統一するほうが、圧倒的に前に進みます。
- 初回〜改善途中:1週間後に1回
- 良くなってきた:2週間に1回
- さらに改善:月1回のメンテナンス
このフォーマットが自分の中にあると、施術の終わりに迷わなくなります。「次は1週間後に来てくださいね」。この一言が、自然に出るようになります。

決め打ちで始めると、経験が育つ
最初は決め打ちでも、回数を重ねるうちに経験値が溜まっていきます。
「この症状なら、もっと頻度を詰めたほうがよかった」「この方は、2週間でも大丈夫だった」「重症度で分岐させたほうがいいな」。
こうして、自分なりの通院頻度の判断基準が、経験として育っていきます。最初から完璧な判断はできなくていい。決め打ちで始めて、走りながら精度を上げる。これが、一人治療家の現実的な学び方です。

10人目・50人目・100人目で、何が変わるか
通院指導を決め打ちで始めると、自分のマインドはこんな段階で変わっていきます。
1人目〜10人目:声が震える
最初は本当に怖いです。「来週、もう一度見させてください」と言うだけなのに、声が震える。患者さんの目を見て言えない。断られたら、「やっぱりダメだ…」と落ち込む。このフェーズは、僕も全員通る道だと思っています。
11人目〜50人目:徐々に言えるようになる
10人ほど続けると、何かが変わります。通って良くなった患者さんが「あの時、続けてよかった」と言ってくれる経験が積み上がります。「ちゃんと提案してよかった」という納得感が、自分の中に少しずつ蓄積していきます。
それでも、言うときの「申し訳なさ」はまだ残っています。
51人目〜100人目:自然に出るようになる
50人を超えてくると、通院指導が自然な施術の一部になります。「次回は1週間後に」と、無意識に言えるようになる。患者さんのほうも「先生がそう言うなら」と素直に受け止めてくれることが増えます。
このフェーズで、ようやく「お金をもらうのが申し訳ない」という気持ちが薄れます。
100人目以降:自分のフォーマットが育つ
100人を超える頃には、自分なりの判断基準が育ちます。「この症状なら3日後がいい」「この方は2週間空けても問題ない」「初回はあえて間を空けて、痛みのリバウンドを実感してもらう」など、症状や患者さんに合わせた独自のフォーマットができます。
ここまで来ると、もう「指導するか迷う」段階は卒業しています。
言葉に詰まったら、この3つを使ってください
「来週、もう一度見させてください」だけだと、患者さんも不安になります。具体的に、こんな言葉を用意しておくと、自分も患者さんも安心します。
① 初診で症状がはっきりしているとき
「今日の施術で、少し楽になっていただけたと思います。ただ、長く積み重なった状態は、1回では戻りきりません。3回ほど続けて見させていただくと、身体の戻りやすさが大きく変わります。来週の同じ曜日、また同じ時間にお越しいただけますか?」
ポイントは「3回」という具体的な数字と、「戻りやすさ」という結果のイメージです。
② 2回目〜3回目で経過が良いとき
「前回から、痛みは7割ぐらい減ってきましたね。ここで間を空けすぎると、また戻ってしまうので、もう1〜2回続けて、しっかり安定させましょう。来週、同じ時間に来ていただけますか?」
ポイントは、数字での経過確認と、戻るリスクの共有です。
③ 改善が見えて、間を空けていくとき
「とても良くなりましたね。ここからは、メンテナンスのフェーズに入りましょう。これからは2週間に1回ぐらいで、お身体の状態を見ながら整えていきます。2週間後、いかがですか?」
ポイントは「フェーズが変わった」と明確に伝えることです。患者さんは「ゴールに向かっている」感覚を持てます。
やってはいけない3つ
回数券を最初から強く勧めすぎる。 「うちは10回券がお得です」を初回から言うと、「営業された」と感じられます。回数券の話は、2〜3回通って効果を実感していただいてからでも遅くありません。
「もっと頻繁に来ないと治らない」と煽る。 不安を煽る伝え方は、その場では予約が取れても、長期的には信頼を失います。「治らない」ではなく「こうすると、もっと早く戻ります」と伝えてください。
全員に同じ頻度を機械的に勧め続ける。 決め打ちで始めるのは正解ですが、慣れてきたら症状や生活に合わせて調整できる引き出しを増やしてください。「全員に1週間後」を続けすぎると、機械的だと感じられることもあります。

「職人」から「経営者」へ
通院指導が自然にできるようになると、もう一つ大きな変化が起きます。自分の役割が「職人」から「経営者」に切り替わることです。
職人マインドは、技術を磨くことが最大の関心で、お金の話は下世話だと感じ、数字を見るのが苦手です。施術の質を上げる原動力ですが、経営の判断には向きません。
経営者マインドは、技術と数字を同時に見て、適正な対価をいただくのが当たり前で、仕組み化に積極的です。切り替わると、見える景色が全く変わります。
「経営者になると、技術が落ちないか」と心配する方もいるかもしれません。僕の経験では、逆です。予約対応で1日1時間使っていた時間が、技術研鑽に使える。会計で月末に深夜まで残業していた時間が、患者さんを観察する時間に使える。
経営者マインドは、職人マインドを捨てることではなく、職人としての時間を確保する手段です。 ここを誤解しないでください。
このブロックは、経験でしか外れません
正直に言います。お金のブロックは、本を読んでも、セミナーに出ても、AIと壁打ちしても、外れません。外れるのは、たった一つの方法だけです。
毎日、目の前の患者さんに通院指導を繰り返す。
通院指導をする。通ってくれる。良くなる。感謝される。「ちゃんと提案してよかった」と自分が納得できる。だから次の患者さんにも自然に言える。売上は、後からついてきます。
「売上が上がる」=「患者さんが良くなる」。この式が自分の身体に染み込んだ瞬間、お金のブロックは静かに外れていきます。
今日やること
次に来院される患者さんに、「来週、もう一度見させてください」と、自分の口で言う。それだけです。その一言が、12年先のあなたのマインドを確実に変えます。