AIに「調べて」とだけ言うのを、やめました|自分の見立てを先に渡す

はじめに|大谷翔平は本当にすごいのか、と思ってしまいました

こんにちは、矢上真吾です。

合同会社e-lifeの代表をしております。ひとり治療院AI自立化サポートをやっている鍼灸師です。

今日は雑談のような回です。Claude Codeを使うとこんなことができますよ、という紹介として読んでいただければと思います。

題材は大谷翔平選手です。

僕は小学校のときに野球をやっていました。中学校からサッカーを始めて、そのまま高校まで行って、鍼灸の専門学校に入って、Jリーグのトレーナーになりました。

なのでサッカーの時間のほうが圧倒的に長いのですが、野球も一応やっていたんですね。昔は結構見ていました。

ただ正直に言うと、ここ最近はまったく追えていません。いまの野球がどうなっているのか、僕はほとんど分かっていない。

それでも、大谷選手の活躍だけは勝手に耳に入ってきます。MVPを何回も取っている。すごい。

そこで僕が思ってしまったのが、これでした。

これ、二刀流で比較できる相手がいないから、唯一無二の存在だからすごいとされているだけなんじゃないか。年度ごとの成績を一つずつ見ていったら、実はそこまでじゃないんじゃないか。

ひねくれていると言われれば、その通りです。

※ この記事は、ポッドキャストで話した内容を記事にしたものです(Spotifyで聴く)。

1. AIに「調べて」とだけ言うと、当たり障りのない答えが返ってきます

AIへの投げ方の違い。丸投げすると要約が返り、見立てを先に渡すと検証が返る

昔だったら、この疑いはそのまま消えていました

こういう疑いって、たいてい自分の中で消えていきます。

昔だったら、記録を一つずつ調べて、自分で並べて、推測していかなければいけませんでした。そんな時間、ないですよね。

なので「まあ、すごいんだろうな」で終わる。それで終わっていました。

いまはこれをAIに投げられます。投げたら、いろいろな情報を出してくれる。

ここまでは、たぶん多くの方がすでにやっていることだと思います。

僕が渡したのは、疑いのほうでした

ここが今日いちばん言いたいところです。

僕がやったのは、「大谷翔平ってすごいの、調べて」ではありませんでした。

先に、自分の見立てを渡しました。

  • 僕は、単年度で一つずつ見たら実はそこまでではないと思っている
  • 二刀流で比べる相手がいないから、大きく見えているだけなんじゃないか
  • 身長190センチ超えだからすごいと言う人もいるけど、190超えなんてざらにいるだろう

こういう、自分の疑いをそのまま渡したんです。

そうしたら、返ってきたのが要約ではなく、検証でした。

「調べて」だけだと、たぶん「MVPを4回取っていてすごいです」で終わっていたと思います。

2. まず、物差しを揃えるところから始まりました

数字で語りたいと言ったので、どの物差しで測るかを先に決めることになりました。3つ出てきました。

WAR(ウォー)

Wins Above Replacement。日本語だと代替選手比の勝利貢献度です。

この選手を、いつでも呼べるマイナーの控え選手と入れ替えたら、チームは何勝減るか。単位は「勝」です。

なぜこれが必要かというと、打撃は打率や本塁打で測り、投球は防御率や勝ち星で測るので、そのままでは足し算ができないからなんですね。

WARは打撃も投球も守備も走塁も、全部「勝」という同じ単位に変換します。なので二刀流を一つの数字にまとめられる、事実上ただ一つの指標ということになります。

読み方の目安はこうです。

WAR評価
0〜1控え・穴埋め
1〜2準レギュラー
2〜3まずまずのレギュラー
3〜4良い選手
4〜5オールスター級
5〜6スーパースター級
6以上MVP級

なおWARには2つの流派があって、投手の測り方が違うため数字が食い違います。この記事はすべてファングラフス版で統一しています。

wRC+(ダブリューアールシー・プラス)

打撃だけの総合力を、リーグ平均を100として表した数字です。160以上で傑出、140で優秀、115で平均以上、100が平均。

155なら、リーグ平均より55パーセント多く得点を生んだということになります。

この指標の一番の強みは、球場・リーグ・時代の補正が入っていることでした。1920年代のベーブ・ルースと2025年の大谷選手を、そのまま並べられる。これは知りませんでした。

FIP(フィップ)

防御率には、投手のせいではない要素が混ざります。味方の守備が良ければ失点は減りますし、悪ければ増えますよね。

そこでFIPは、投手が一人で決められる3つだけで計算します。奪三振、与四球と与死球、被本塁打。この3つは守備が関与しません。

目盛りは防御率と同じに揃えてあるので、そのまま並べて読めます。3.20で傑出、4.20が平均くらいです。

3. 検証その1|打者だけなら、すごいのか

年度別に並べてもらいました。

本塁打打率/出塁率/長打率wRC+打撃WAR
201822.285/.361/.5641492.7
201918.286/.343/.5051201.6
20207.190/.291/.366800.0
202146.257/.372/.5921505.0
202234.273/.356/.5191423.6
202344.304/.412/.6541806.6
202454.310/.390/.6461809.0
202555.282/.392/.6221737.5
2026(8月末)30.287/.388/.5461514.1
通算310.282/.376/.57815540.2

通算のwRC+は155。傑出ラインの160には届いていません。

そして同じ時代に、アーロン・ジャッジ選手がいます。ジャッジ選手の通算wRC+は176、通算WARは63.5です。

さらに、wRC+が200を超えたシーズンがジャッジ選手には3回あります。2022年に206、2024年に219、2025年に203。

大谷選手は、200を超えた年が一度もありません。最高は180です。

本塁打王は2023年に44本、2024年に54本で獲っています。ただ2025年は、自己最多の55本を打って、シュワーバー選手の56本に1本差で2位でした。

つまり、その年のメジャーで最高の打者だった年は、実は一度もないということになります。

とはいえ、すごいんです。通算310本塁打というのは、32歳の時点でバリー・ボンズの同年齢292本、ジャッジ選手の257本を上回っています。積み上げのペース自体は歴史的な水準でした。

4. 検証その2|投手だけなら、すごいのか

勝敗防御率投球回奪三振FIP投球WAR
20184-23.3151.2633.571.1
20200-137.801.2313.99-0.1
20219-23.18130.11563.523.0
202215-92.33166.02192.405.6
202310-53.14132.01674.002.3
20251-12.8747.0621.901.9
2026(8月末)8-21.7985.2952.592.9
通算47-222.83614.17653.1016.6

投球回の小数点は、.1が3分の1回、.2が3分の2回です。614.1回は「614回と3分の1」ということでした。

こちらの結論のほうが、はっきりしていました。投手だけなら、すごいとは言い切れません。

理由は2つです。

1つめ。最優秀投手賞にあたるサイ・ヤング賞に、キャリアで一度も3位以内に入っていません。最高は2022年の4位で、しかも1位票はゼロでした。15勝9敗、防御率2.33、219奪三振という成績で、です。

2つめ。通算614.1回という投球回は、殿堂入り投手の目安とされる2000回から3000回に対して4分の1以下です。

2019年は肘の手術で登板がありませんでしたし、2024年も一年間投げていません。2026年も、7月3日を最後に膝と二頭筋の状態で登板が止まっています。

ただ、内容の質そのものは本物でした。通算防御率2.83、FIPは3.10。FIPの傑出ラインが3.20ですから、これは超えています。

量が足りないという話であって、質が足りないという話ではありませんでした。

5. 検証その3|身長190センチ超えだからすごい、という説

これもよく聞きます。確かめました。

メジャーリーグ公式の表記で、身長193センチ、体重95キロ。

一方、2025年シーズンのメジャーリーグ全体の平均身長が186.9センチ。投手だけで見ると、平均189.2センチでした。

大谷選手は、投手の平均より4センチ高いだけです。まったく珍しくありません。ちなみに先ほど出たアーロン・ジャッジ選手は201センチです。

ですので、身長は説明になりませんでした。ここも見立てのとおりです。

では身体で何が違うのか。スタットキャストという、全球場に設置されたレーダーとカメラによる実測データがあります。

  • 平均打球速度 時速150.5キロ(全選手中の上位3パーセント)
  • 最速打球 時速184.4キロ(過去最高は191.7キロ)
  • 強い打球の割合 52.3パーセント(上位4パーセント)
  • 投球最速 時速163.7キロ
  • 走塁の最高速度 秒速28.2フィート(メジャー平均は27フィート)

打球の速さは上位3パーセント。球速も160キロを超える。足も平均より速い。

ただ、どれ一つとして歴代1位ではありませんでした。打球速度も、球速も、足も、上には上がいます。

ですので本当の差は、身体のスペックではないんですね。中5日か6日で先発しながら、投げない日はすべて指名打者として4打席、5打席立つ。これを5シーズン続けている。その回復力と、スケジュールに耐える力のほうでした。

6. ここまでは、僕の見立てどおりでした

打者としてはその年の1位ではない。投手としては量が足りない。身長は関係ない。

僕がうれしかったのは、当たっていたことよりも、「そうですね、すごいですね」で終わらなかったことのほうです。

疑いを渡すと、その疑いを検証する形で数字が出てくる。ここが「調べて」との差でした。

7. 面白かったのは、見立てが外れたほうでした

後半で、比較相手としてベーブ・ルースが出てきます。二刀流の先行例は、歴史上この人しかいません。

ここで面白いことが分かりました。

打撃WAR投球WAR
19151.42.5
19160.94.5
19171.53.3
19185.21.5
19199.40.5

ルースが防御率1.75でリーグを制した1916年、この年の打撃WARは0.9しかありません。

逆に当時の記録である29本塁打を打った1919年、この年の投球WARは0.5まで落ちています。

投手としての全盛期と、打者としての全盛期が、きれいにずれているんです。同時に両方が超一流だった年が、実はほとんどない。

そこでAIが、「二刀流は合計ではなく、打撃と投球の小さいほうで測るべきではないか」という物差しを出してきました。合計だと、打つだけの年でも数字が出てしまうからです。

その小さいほうの数字で比べると、ルースの生涯最高が1.5、大谷選手が3.6で、2.4倍になるという話でした。

ただ、これは公式の指標ではありません。今回の比較のためにAIが組んだ見方です。そこはAI自身が断ってきました。

ここは、僕とAIで意見が合いませんでした

正直に書きますが、僕はこの見方に完全には納得していません。

先ほどの表をもう一度見てください。大谷選手も、打撃と投球の両方が突出していた年って、実はないんですよね。どちらも4以上、という年がひとつもない。

だから「同時に両方が超一流」と言い切るのは、僕はちょっと違うと思っています。

そして、こういうふうに意見が合わないところまで出てくるのが、今回いちばん面白かったところでした。

8. それでも、ひとつだけ動かない数字がありました

タイトル争いのランキングに載るには、最低出場ラインがあります。これを「規定」と言います。

  • 規定打席は、チーム試合数かける3.1。162試合なら502打席
  • 規定投球回は、チーム試合数かける1.0。162イニング

大谷選手は2022年に663打席と166.0イニングで、両方をクリアしました。

これがメジャーリーグ146年の歴史で初めてです。ルースですら達成していません。1918年でも380打席と166.1回で、打席のほうが規定に届いていませんでした。

投票でも評価でもなくて、502打席と162イニングという機械的な線を、両方とも実際に越えたという話です。ここには異論の挟みようがない。

疑って入ったのに、最後は「唯一の選手だな」というところに着地しました。

9. ダルビッシュ選手の心配は、数字に出ていました

もうひとつ、調べていて腑に落ちたことがあります。

ダルビッシュ有選手が、いまから12年前に話していたことがあります。大谷選手がまだプロ2年目だった2014年12月のことです。

二刀流では絶対メジャーに行けない。絞るならピッチャーだ、と。

当時は厳しいことを言うなと思った記憶があります。でも今回、数字を並べて見て、なんとなく分かる気がしました。

ダルビッシュ大谷
メジャー年数13年7年(うち2年は登板ゼロ)
勝敗115-9347-22
防御率3.652.83
投球回1,778.0614.1
奪三振2,075765
FIP3.593.10
投球WAR36.016.6

投球回が3分の1以下なんですね。打つために、投げる量がどうしても削られている。

大谷選手は質はめちゃくちゃ高いんです。防御率もFIPも、ダルビッシュ選手より良い。ただ、量が積み上がらない。

そして実際、故障が多いですよね。ここは正直、気になるところです。心配していた人の言い分は、けっこう当たっていたんだなと思いました。

10. 日本人選手と並べてみました

イチロー選手

ここでいちばん驚いた数字が出ました。イチロー選手の通算wRC+は104だったんです。

リーグ平均を4パーセント上回っただけ、という数字です。

これは決してイチロー選手を下に見る話ではなくて、価値がどこにあったかを正確に示している数字だと思っています。

通算117本塁打、長打率.402ですから、長打はほとんど打っていません。打率.311に対して出塁率が.355ですので、四球もあまり選んでいない。

それでも通算WARが57.5ある。差額はどこから来たか。ゴールドグラブ賞10年連続という守備、509盗塁という走塁、そして19年間ほぼ全試合に出続けた耐久性でした。

打つ力ではなく、打席に立ち続ける力と、打つ以外の全部で57.5を積んだということになります。

そして大谷選手は、9年、32歳の時点で56.8。あと0.7です。今のペースなら、数週間のうちに19年の数字に並びます。

ただし公平に付け加えると、イチロー選手のメジャーデビューは27歳です。日本で9年、1278安打を積んでからの渡米でした。日米通算では4367安打で、2016年にピート・ローズのメジャー記録4256安打を超えてギネス世界記録に認定されています。2004年のシーズン262安打も、いまだにメジャー記録です。

積み上げの物差しではイチロー選手、1打席あたりの密度では大谷選手。これが公平なところだと思います。

山本由伸選手

同じドジャースにいる山本選手を並べると、もう一つ見えるものがありました。

山本選手はメジャー3年目で、通算投球回が415.1回です。大谷選手の7年614.1回の、すでに3分の2に達しています。

同じチーム、同じ先発ローテーションにいる二人で、この差なんですね。

つまり、大谷選手の投球回が少ないのは、足りないのではなく払っているということになります。

まとめ|自分の見立てを先に渡すと、検証が返ってきます

結論を並べます。

  • 歴代最高の打者かというと、違います(通算wRC+ 155。ルース194、ジャッジ176が上)
  • 歴代最高の投手かというと、これも違います(通算614回、サイ・ヤング賞3位以内ゼロ)
  • 歴代最高の野球選手かというと、現時点では違います(通算WAR 56.8。ルースは179.4)
  • ただ、最も再現不可能な選手かというと、これはそうだと言えます

今回やったことは、たったこれだけです。

自分の見立てを先に言ってから、AIに投げた。

「調べて」だけだと、たぶん当たり障りのないものが返ってきます。「僕はこう疑っている」を先に渡すと、検証が返ってくる。しかも、自分が間違っていたところまで出してくれる。

お時間が空いたときに、こういうことをバーッとやってみると、知見が増えます。仕事に直結しなくてもいいと思っています。僕は完全に趣味でやりました。

ただ、この投げ方の癖は、そのまま仕事にも効きます。もし試されるなら、質問を投げる前に、自分の仮説をひとこと足してみてください。

なお、ここに書いた内容への批判は、ぜひご遠慮いただけると助かります。心が病んでしまいますので。あくまでお遊びの感覚で読んでいただけたら嬉しいです。

※ この記事の数字は、ファングラフス、ベースボール・アルマナック、ベースボール・サヴァント、MLB公式などの公開データをもとにしています。WARはすべてファングラフス版で統一しました。2026年の数字はシーズン途中(8月末時点)のものです。