
【2026年9月14日 追記】
この記事で「2冊同時に出します」と話していた本のうち、広告制限の実務記録は、9月8日に5冊目『その看板、あはき法に通りますか』として発売になりました。
技と制度の来歴のほうは、6冊目『あん摩マッサージ指圧師という仕事』として、終章まで初稿を書き上げて、仕上げに入っています。
いまの目次と、調べていて手が止まった「将来性」の数字を、記事の後半(6・7)に足しました。
はじめに|本を2冊、同時に出します
こんにちは、矢上真吾です。
合同会社e-lifeの代表をしております。ひとり治療院AI自立化サポートをやっている鍼灸師です。
今日は、本をまた出します、というお話をします。しかも今回は、2冊同時です。
先に、この記事でいちばん言いたいことを書いておきます。
24年持ってきた「あん摩マッサージ指圧師」という資格を、僕はいま、はじめて調べ直しています。そして調べるほど、自分がやってきたことは、本当はこの資格のままでできたのだと分かってきました。
これは、そういう本です。
※ この記事は、ポッドキャストで話した内容を記事にしたものです(Spotifyで聴く)。
1. きっかけは、保健所での指摘でした
法人成りの手続きで、看板を指摘されました
ことの発端は、法人成りです。
合同会社e-lifeという会社に、本業の和からだみなおし処を入れました。個人事業から法人へ、運営を移したということです。13年目にしての法人成りでした。
そうすると、個人事業としての廃業の届出と、新しく開設の届出を出す必要があります。それで保健所に行きました。
そこで、看板の名称について指摘を受けました。
言い方はとても丁寧でした。責められた感じはまったくなかったです。ただ、指摘されたのは事実で、僕はそこから看板と屋号を直しはじめました。
13年目に「鍼灸マッサージ院」へ戻しました
長いこと、僕は「はりきゅう整体院」と名乗っていました。それを「鍼灸マッサージ院」に戻しました。
戻す、という言い方をしているのは、こちらが本来の名前だからです。持っている資格そのままの名前に、13年目にして帰ってきたことになります。
その直しは、だいぶ終わりました。看板、ホームページ、印刷物、地図情報。細かいところが山ほどありましたが、ほとんど手が入りました。
そして、その作業の途中で、僕は思ったんです。
そもそも僕は、この資格が何なのかを、ちゃんと知らないままここまで来たな、と。
2. 調べ直して、いちばん驚いたこと
やってきたことは、この資格のままでできた
調べ直して、いちばん驚いたのはここです。
僕がこの13年やってきたことは、ほとんど全部、あん摩マッサージ指圧師という資格の中でできることでした。
別の名前を看板に乗せる必要は、本当はなかったんです。中身は最初から、資格の中にありました。遠回りしていたのは、看板に書いた言葉のほうだけでした。
そう分かったときの気持ちは、悔しさよりも、ちょっと恥ずかしさに近かったです。24年もやっていて、自分の資格の輪郭を知らなかった。
調べるほど、素敵な資格だと思うようになりました
もうひとつあります。調べれば調べるほど、この資格は素敵なものだな、と思うようになりました。
歴史がしっかりある。技の系統がはっきりある。国が資格として認めるまでに、人が動いた経緯がある。
自分が毎日やっている手の仕事に、そんな長さの背景があったのかと。指摘を受けて追い詰められて、その勢いで調べたら、出てきたのは誇りのほうでした。
だから本にします。せっかく調べたので、僕の中だけに置いておくのはもったいない。
3. 1冊目|技の来歴(第1章〜第5章)

第1章|あん摩・マッサージ・指圧は、別々の場所から来た
まず、ここが本のいちばんの入口です。
「あん摩マッサージ指圧師」という資格名は、ひと続きの言葉に見えます。でも中身は、出身地の違う三つの技が並んでいるだけなんです。
- あん摩は、中国から来ました
- マッサージは、フランスから来ました
- 指圧は、日本で生まれました。ただし日本にもともとあったものと、アメリカから入ってきたものが合わさっています
僕はこれを、資格を取ってから20年以上、はっきり言葉にできていませんでした。学校で習ったはずなのに、答えられなかった。
第2章|あん摩の900年
2章は、あん摩です。
中国の古い医学書から始まって、江戸時代の古方あん摩まで。ざっと900年ぶんの流れを追いかけます。
この長さが、僕には効きました。いま自分がやっている手技の型は、思いつきで始まったものではないんだな、と。
第3章|なぜマッサージは、フランス語で入ってきたのか
3章はマッサージです。
「マッサージ」という言葉は横文字です。当たり前に使っていますが、なぜ横文字なのかを僕は考えたことがなかった。
ここはフランスから始まります。そこからスウェーデンなど、何カ国かを経由して広がっていって、日本に入ってきます。国をまたぐたびに、少し形が変わりながら伝わっていく。その道筋の話です。
第4章|指圧は、日本製のハイブリッドです
4章が、いちばん面白かったところです。
指圧は日本で生まれた技です。ただ、純日本産ではありません。あん摩の手に、アメリカの頭を乗せたという言い方がしっくりきます。
ここに入っているのは、この3つです。
- カイロプラクティック
- オステオパシー
- スポンディロセラピー(いまはもう残っていません)
3つめは、僕も今回はじめて知りました。当時アメリカにあって、いまは消えている理論です。消えたはずの考え方が、日本の指圧の中にまだ残っている。そういうことが起きています。
第5章|指圧の、日本側のルーツ
5章は、その日本側です。
あん摩とは別に、日本にもともとあった手当ての系譜があります。指圧はそこにも足をかけています。4章がアメリカ側の話なら、5章は日本側の話です。
4. 1冊目|制度の来歴(第6章〜第10章)

ここから後半です。技の話から、制度の話に切り替わります。
第6章|国家資格になるまで
この仕事が国家資格になるまでの経緯です。ここも戦後、アメリカが関わってきます。
第7章|隣にある「整体」の話
7章は、僕が長らく看板に乗せていた言葉の話です。
僕は「はりきゅう整体院」と名乗っていました。それを今回やめました。
ただ、調べていて知ったことがあります。この分野にも、国家資格を作ろうという動きが実際にあったんです。結果としてそうはならなかったわけですが、動きそのものはあった。
そこを知ると、いまの線引きの見え方が少し変わります。線は、はじめからそこにあったのではなくて、引かれた経緯があってそこにあるんだなと。
第8章|名称独占と業務独占
8章は、正直に言って難しいところです。僕も何度も読み返しました。
資格の守り方には2種類あります。名前を守る型と、仕事そのものを守る型です。
- 僕らあん摩マッサージ指圧師は、業務独占です
- 理学療法士は、名称独占です
同じ「国家資格」というひとことでまとめられますが、守られている中身が違います。ここを混ぜたまま話すと、話がずっとかみ合いません。8章では、ここをはっきりさせます。
第9章|広告制限
9章は広告制限です。今回のすべての発端になったところです。
ここは分量が多くなったので、結局もう1冊に分けることにしました(後で書きます)。
第10章|理学療法士との違い
10章は、理学療法士との違いです。8章の名称独占と業務独占の話が、ここでつながります。
終章|これから
そして終章です。
技の来歴、制度の来歴、そしてこれから。この順番で、全体をひとつの流れにしています。
5. もう1冊|広告制限の実務記録

条文の整理ではなく、僕の記録です
2冊目は、広告制限のほうです。
こちらは、僕が保健所で指摘を受けてから、実際にやってきたことをそのまま書きます。条文の解説書ではありません。
今回、保健所の方と何度もやり取りをさせていただきました。そのなかで、ここまでは大丈夫、ここからは良くない、というところをはっきり教えていただきました。
おかげで、いまはクリアな状態で仕事ができています。それが本当にありがたいです。
地域の方と一緒に作っていく
この件を通して、あらためて思ったことがあります。
地域の方々と一緒になって、いいものを作っていく。これがすごく大事だな、と。
指摘は、止められたのではなく、ここまでやっていいと線を教えてもらったことでした。線が見えたので、その中で堂々とやれます。そのやり取りの記録が、そのまま2冊目になります。
(9月14日 追記)この本は、9月8日に5冊目『その看板、あはき法に通りますか』として発売になりました(Kindle/ペーパーバック)。
6. その後|5冊目は発売、6冊目は終章まで書き上がりました(9月14日 追記)
収録した8月24日の時点では、68,000字ほど書けていて、8月末か9月初めに出すと話していました。その後の進み方を書いておきます。
広告制限の実務記録 → 5冊目として9月8日に発売
『その看板、あはき法に通りますか』です。保健所で指摘を受けてから、数えて、分けて、順番をつけて直していった実務の記録を、そのまま1冊にしました。
技と制度の来歴 → 6冊目『あん摩マッサージ指圧師という仕事』として仕上げ中
サブタイトルは「追い詰められて残った国家資格の来た道を、臨床24年の当人が、いまさら調べ直した」です。
いちばん読んでほしいのは、同じ資格を持って現場に出ている方と、いまその学校にいる方です。制度史を、養成校でも現場でも通しでは教わらなかった。それは、ほぼ全員だと思うからです。患者さんに向けた「治療院の選び方」の本ではありません。
8月に話していた章立てから、書きながらだいぶ変わりました。序章から終章まで初稿を書き上げた、いまの目次がこちらです。
序章|名称を戻すと決めたら、自分の仕事をもっと知りたくなった
第1部 技の来歴
- 第1章|あん摩・マッサージ・指圧は、別々の場所から来た
- 第2章|あん摩の千三百年
- 第3章|マッサージは、なぜフランス語で入ってきたのか
- 第4章|指圧は、あん摩の手にアメリカの頭を載せた日本製
- 第5章|殺す技と活かす技は、同じ地図を見ていた
- コラム1|うちは四人が同業でした
第2部 制度の来歴
- 第6章|一万数千人の署名
- 第7章|672人が捕まって、国家資格になった
- 第8章|「整体」は、国家資格をつくるための旗印だった
- 第9章|名前を変えると、箱が変わる
- 第10章|看板に書いていいのは、告示の九項目だけ
- 第11章|生業が先か、法律が先か
- コラム2|ストレッチに国家資格はありません
第3部 いまの数字
- 第12章|入口は数えられないのに、出口だけ数えられている
- 終章|だから、測ることにした
本にするにあたって、条文と告示と国会の会議録と判決文を、原本まで取りにいきました。ポッドキャストで話した内容のうち、直さなければならないところが、いくつも出てきました。その補正も、この本に入っています。
残っているのは、検品と表紙と出稿です。発売になったら、この記事にも追記します。
7. あん摩マッサージ指圧師の将来性|統計を見て、手が止まりました
第3部で、いまの数字を見ました。ここは、本を書いていていちばん手が止まったところなので、先に記事にも書いておきます。
国家資格側の数は、2年ごとに全部わかります
厚生労働省の「衛生行政報告例」という統計で、2年ごとに全数が出ます。免許があり、開設届の義務があるからです。令和6年末の就業者数はこうなっていました。
| 資格 | 人数 | 前回(令和4年)比 |
|---|---|---|
| あん摩マッサージ指圧師 | 119,703人 | +0.7% |
| はり師 | 136,736人 | +4.0% |
| きゅう師 | 134,730人 | +4.1% |
| 柔道整復師 | 78,666人 | +1.3% |
はり師ときゅう師が4%伸びているのに、あん摩マッサージ指圧師だけが0.7%です。施術所に至っては、「あん摩、マッサージ及び指圧を行う施術所」が17,531か所で、前回から486か所減っています。4つの区分のうち、唯一減っています。
10年で見ると、差はもっとはっきりします。
- あん摩マッサージ指圧師:113,215人(平成26年)→ 119,703人(令和6年)=+5.7%
- はり師:108,537人 → 136,736人=+26%
同じ学校の、同じ3年課程で取る資格です。それなのに、10年で26%伸びた資格と、5.7%しか伸びていない資格がある。
理由は人気ではなく、条文でした
統計を見て「あん摩マッサージ指圧は人気がないのかな」と思うのは簡単です。そうではありませんでした。制度がそう設計されているからです。
あはき法の附則第19条第1項。視覚障害のあるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため、必要があると認めるときは、視覚障害者以外を養成する学校の新設を認めないことができる、という規定です。昭和39年に新設され、令和4年に最高裁が合憲と判断し、内容は60年以上変わっていません。
学校が増えなければ、有資格者は増えません。条文が、そのまま数字に出ています。そして、その設計の理由は、1947年の「盲人の立場からは真に生活の問題である」という請願にまで遡ります。数字の背後に、79年ぶんの経緯があります。ここは本の第6章と第12章に書きました。
制度の外側は、事業所の数だけ倍になっています
いっぽうで、免許も登録も開設届の義務もない側は、何人いるのかを誰も数えていません。国自身が「その種類や範囲は必ずしも明確となっていない」と認めています。
数えられるのは、経済センサスの事業所の数と売上高だけです。平成24年から平成28年までの4年間で、国家資格者の施術所(産業分類8351)が43,021から47,461へ約10%伸びた同じ期間に、整体やカイロプラクティックが入る「その他の療術業」(8359)は9,507から18,186へほぼ倍増、売上高も674億円から1,395億円へ倍以上になっていました。
この数字は平成28年時点のものです。それ以降の年次は、公表されている概要に療術業の内訳がなく、僕は確認できていません。
そのうえで、僕はこちらでやっていきます
正直に書きます。あはき法や広告ガイドラインを調べていくと、なかなか大変だなと思うところがあります。看板に書いていいのは九項目だけで、経歴も技能も書けません。隣に行ったら、わりと自由にできそうだな、と思う瞬間はあります。だから、国家資格を持っている人がそちらへ行くのも、理解はできます。
そのうえで、僕は鍼がわりかし好きなので、国家資格を掲げて、届け出も出して、これからもやっていこうと思っています。どちらが正しいという話ではありません。選び方の話です。
この資格が、2年ごとの統計で、有資格者だけが増えて施術所は減っていく職業でもあることを、この本で知りました。来歴を知った側が、これから何を残すか。僕にできるのは、たぶん、測って、書くことです。終章は、その話で閉じています。
8. 作り方|喋って、壁打ちして、本にする
ポッドキャストが、そのまま素材になっています
この本の材料は、ここ最近の朝のポッドキャストです。
いま毎朝、この話をしています。それを文字にして、まとめていく。つまり僕は、話しているうちに本を書いていることになります。
最近、ポッドキャストがすごく楽しいです。
Claudeと壁打ちして、台本を作ります
手順はこうです。
まずテーマを決めます。そのテーマでClaudeとやり取りをします。「とにかくこういうテーマでやりたいんだ」と投げて、何度か壁打ちをして、そこから台本を作っていきます。
この壁打ちが、僕自身の勉強になっています。ひとりで調べていたら、たぶんこの量は無理でした。喋る前に整理して、喋りながらまた気づいて、それを書く。この形が、いまいちばん回っています。
自分がずっと関わっている仕事で、これからも関わり続けていきたい仕事で、誇りに思っている仕事です。その良さを、もっと広められるようにしたいと思っています。
次は、はり師・きゅう師の仕事を掘ります
この2冊ができたら、次ははり師・きゅう師のほうを掘りたいと思っています。
あん摩マッサージ指圧でこれだけ出てきたので、鍼と灸のほうも同じくらい出てくるはずです。そちらも楽しみにしていてください。
9. おまけ|Cloudflareへの移行が、だいぶ進みました
最後に、進捗の報告をひとつ。
先日から書いている脱WordPressの移行が、だいぶ進みました。ほぼWordPressからCloudflareに移せたのかな、というところまで来ています。
予約システムも移りました。これまで別の場所で動かしていたものを、同じところに寄せました。
残っているのはドメインです。僕はいま使っているサーバーの会社でドメインを取ったので、これを移せるのかどうか、まだ分かっていません。ここができれば、全部Cloudflareで一元管理になります。そうなれば、ランニングコストもかなり落ちます。
非エンジニアの僕でも、ここまで管理が簡単にできて、ホームページも自分で運用できる時代になっています。そこも、楽しみにしていてください。
まとめ|追い詰められて調べたら、出てきたのは誇りでした
- 保健所で看板を指摘され、屋号を「鍼灸マッサージ院」に13年目で戻した。その作業中に、自分の資格を知らないままだったと気づいた
- 調べ直したら、やってきたことはほとんどこの資格の中でできた。遠回りしていたのは看板の言葉だけだった
- 「あん摩マッサージ指圧師」は、出身地の違う三つの技が並んだ名前。あん摩は中国、マッサージはフランス、指圧は日本+アメリカ
- 指圧はあん摩の手にアメリカの頭を乗せたハイブリッド。カイロプラクティック、オステオパシー、いまは残っていないスポンディロセラピーが入っている
- あん摩マッサージ指圧師は業務独占、理学療法士は名称独占。同じ国家資格でも守られている中身が違う
- 本は2冊同時。表が技と制度の来歴、裏が広告制限の実務記録。いま68,000字、8月末から9月初めに出す(→ 9月14日追記:広告制限の本は5冊目として9月8日に発売。来歴の本は6冊目として仕上げ中)
- 将来性を統計で見ると、はり師が10年で26%伸びる間に、あん摩マッサージ指圧師は5.7%。施術所は4つの区分で唯一減っている。理由は人気ではなく、あはき法附則第19条(学校の新設制限)という条文だった
指摘されて追い詰められて、その勢いで調べました。出てきたのは、言い訳ではなく誇りのほうでした。
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矢上真吾について
鍼灸師歴24年/合同会社e-life代表/和からだみなおし処 院長/著書5冊。千葉県館山市で鍼灸マッサージ院を13年、その横で「ひとり治療院AI自立化サポート」をやっています。この回のポッドキャスト(Spotify)でも同じ話をしています。
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