
はじめに|開業して、いちばん苦しかったのが3年目でした
こんにちは、矢上真吾です。
合同会社e-lifeの代表をしております。ひとり治療院AI自立化サポートをやっている鍼灸師です。
今日は税金の話です。個人事業主の税金について、僕の経験を踏まえて話します。
僕が開業して、いちばん苦しかったのが3年目でした。1年目は売上があまり上がらず、赤字で計上しました。なので税金はほとんどかかっていません。2年目は利益が500万円くらい出て、そうしたら3年目に税金がかかってくるようになった。さらに3年目に売上が1,000万円を突破して、5年目くらいに消費税を払うことになって、そこでもう一回苦しみました。
この辺りでようやく税金に対する考え方が分かってきたんですが、最初のほうは本当に「なんでこんなに売上が上がっているのに苦しいんだろう」というくらい、走りながらだったので分かっていませんでした。
こういった税金については勉強したほうがいいと思いますので、年ごとに追いかけていきます。
1. まず、何に税金がかかるのか

年ごとの話に入る前に、個人事業主が払う税金を整理しておきます。主に4つです。
- 所得税。国に払う税金です。
- 住民税。県と市に払う税金です。
- 個人事業税。県に払う税金で、決められた業種だけにかかります。はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧はかかります。
- 消費税。国に払う税金です。
このうち、上の3つは「所得」にかかります。所得というのは、売上から経費を引いた儲けのことです。
そして4つ目の消費税だけは、儲けではなく「売上」で判定されます。ここが大事なので、覚えておいてください。
2. 1年目|何も起きない年
開業1年目。僕の場合は、ここが赤字計上でした。
所得がなければ、所得税はゼロです。住民税も、所得に応じてかかる部分はゼロになります。
青色申告にしておくと、赤字は3年間繰り越せます。翌年黒字になったときに、その黒字から1年目の赤字を引ける仕組みがあるので、青色申告はしておいたほうがいいです。
つまり1年目は、税金についてはほとんど何も起きません。僕はまず売上自体が苦しかったので、ここで税金という感覚は一切なかったです。
3. 2年目|儲かっているのに、払っていない年

2年目、僕は利益が500万円くらい出ました。すごく儲かったんですけど、税金を払っていないんです。
押さえておいたほうがいいのは、税金は翌年にかかるということです。2年目に払う税金は、1年目の分なんです。
所得税は、1年分をまとめて翌年の3月に払います。住民税も、前年の所得に対して翌年の6月から払い出します。
なので2年目は、1年目が赤字だった僕の場合、ほとんど税金を払っていません。売上が上がって、利益も出てきて、でも税金がかからない。通帳の残高が、実力以上に多く見える年です。
ここで僕は、まったく税金のことを考えていませんでした。
4. 3年目|請求がまとめて来る年

そして3年目。ここで、2年目の儲けに対する請求が一気に来ます。並べてみます。
3月|所得税(2年目分を一括)
まず3月。2年目分の所得税を一括で納めます。
所得税は、個人だと儲けが多いほど税率が上がります。これを累進課税と言って、課税所得に応じて5%から45%まで7段階あります。ここに復興特別所得税というのが上乗せされます。所得税額の2.1%で、2037年まで続きます。
6月|住民税(初めて発生する)
次に6月。住民税がここで初めて発生します。税率はほぼ一律で10%。6月に納付書が届いて、4回に分けて払います。
この6月の納付書、ビビりますよね。
7月と11月|所得税の予定納税
次に7月と11月。なんと、所得税の予定納税というのが出てくるんです。
前の年の所得税が15万円以上だった人は、今年の分の所得税を前払いしてください、と言われます。今年の儲けはまだ確定していないのに、前年の実績をもとに一回払う。もちろん翌年に調整はされるんですが、3年目は、2年目分と3年目分の所得税を出すことになるわけです。
予定納税、ビビりました。
8月と11月|個人事業税
次に8月と11月。個人事業税です。
これは業種で分かれていて、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師は「第三種事業」という区分で、税率は年3%です。多くの業種は5%なので、我々は軽めです。ありがたいです。
ただし、年間290万円の事業主控除というのがあって、事業所得が290万円以下の人にはかかりません。僕は2年目に500万円くらい利益が出ていたので、しっかりかかっていました。

3年目の正体
整理すると、3年目に来るのは、3月に所得税、6月から住民税、7月と11月に予定納税、8月と11月に個人事業税です。
しかも3年目は本業が伸びている最中です。僕はこの年、初めて売上が1,000万円を超えました。まだ消費税は出ていないのに、月100万円を超えていったのに、出ていくのがめちゃめちゃ多い。
一度、本当に銀行口座が残り数万円になったことがありました。それくらい、よく分かっていなかったんです。
「初めての住民税」と「予定納税」と「翌年の所得税がさらに増える」が重なるのが、3年目の正体でした。
5. 4年目|静かに判定されている年

4年目。ここは一見、新しいことが起きません。でも裏では、消費税の判定が進んでいます。
基準期間|2年前の売上で決まる
消費税には「基準期間」という考え方があります。2年前の売上を見て、その年に消費税を払うかどうかを決める、という仕組みです。
その2年前の課税売上が1,000万円以下なら免税事業者で、消費税を納める義務はありません。逆に1,000万円を超えていると課税事業者になります。
僕は2年目、利益は出たんですが、売上はたしか950万円くらいでした。当時は1,000万円が大台だと思っていたので、超えたかったんですけどね。なので2年目は届かず、3年目に売上が1,000万円を超えました。
すると、その3年目が基準期間として見られるのは、2年後の5年目です。4年目はまだ免税のままでした。
特定期間|1年早くなる例外
ひとつ例外があって、特定期間という判定があります。前の年の1月から6月までの半年間で課税売上が1,000万円を超え、なおかつ従業員に払った給与も1,000万円を超えていると、1年早く課税事業者になるそうです。
当時は僕一人でやっていたので、給与のほうでまず引っかかりません。ここは気にしなくていいのかなと思います。
つまり4年目は、何も起きていないように見えて、5年目の消費税がすでに決まっている年です。
6. 5年目|消費税が始まる年
5年目。僕が2回目に苦しんだ年です。消費税の納税義務が発生します。
この5年目の1年間の売上にかかる消費税を、翌年の3月にまとめて払います。つまり実際にお金が出ていくのは、6年目の3月です。所得税とは別の税目なので、3月に所得税と消費税が並んで来ます。ビビります。
治療院ならではの話|保険分は非課税
はり・きゅう・マッサージの施術のうち、健康保険が適用される分は消費税が非課税です。自費の施術が課税売上になります。
だから「売上1,000万円」の判定も、保険分は除いて数えます。僕は自費だけでやっているので、この辺りは考えたことがなかったです。
いま動いている制度|2割特例から3割特例へ
それから、今まさに動いている制度の話です。
2023年10月からインボイス制度が始まりました。免税事業者だった人がインボイス発行事業者に登録して課税事業者になった場合、納める消費税を売上にかかる消費税の2割にできる「2割特例」という措置があります。個人事業者の場合、これは2026年分まで使えます。
そして令和8年度の税制改正で、2027年分と2028年分の2年間は、納税額を売上税額の3割にできる「3割特例」が新しく設けられました。この3割特例は個人事業者だけの措置で、法人には適用されないそうです。
この辺は、僕はもう超えてしまっていたので、何も考えていませんでした。
7. 二重のズレ|ここまでを一枚にまとめる

所得税、住民税、個人事業税は、儲けた年の「翌年」に来ます。消費税は、売上が1,000万円を超えた年の「翌々年」から義務が始まって、払うのはさらにその翌年です。
だから、こういう順番になります。
- 1年目:ほとんど何も起きない
- 2年目:儲かっているけど払っていない。ここで僕は誤解した
- 3年目:請求がまとめて来てビビった
- 4年目:3年目と変わらないけど、売上が1,000万円を超えたので消費税が決まっていた
- 5年目:消費税が始まった
制度がそう決まっているので、ちゃんと準備しておけばよかったんです。
ちなみに僕は、2年目から税理士にお願いしていました。税理士は、これを話してくれていたんです。話してくれていたけど、実感が湧いていなかった。そういったことが起きますので、気をつけてください。
8. 控除の話|基礎控除と青色申告特別控除

最後に、控除の話をひとつ。
基礎控除という、誰でも使える控除があります。これは2024年分までは48万円だったんですが、2025年分は95万円、2026年分は104万円に上がっています(所得が高い人ほど控除額が小さくなる仕組みで、104万円は合計所得金額489万円以下の場合です)。48万円じゃなくなっているんですね。
それから、青色申告の控除。複式簿記で帳簿をつけて、e-Taxというインターネット上のシステムで申告すると、いまは最大65万円を所得から引けます。これは、やらない理由がないと思います。
この控除が、2027年分から変わります。複式簿記とe-Taxに加えて、訂正や削除の履歴が残る「優良な電子帳簿」で保存していると75万円に上がる。逆に、複式簿記でも紙で出すと、いま55万円のところが10万円まで下がる。
やば、と思いました。まあ要するに、早くペーパーレスにしろ、ということですね。紙で申告している人ほど影響が大きい改正です。
まとめ|税金は、時間差でやって来る

- 個人事業主の税金は主に4つ。所得税・住民税・個人事業税は「所得」に、消費税だけは「売上」でかかる
- 1年目は赤字なら何も起きない。青色申告なら赤字は3年繰り越せる
- 2年目は儲かっていても払うのは1年目分。通帳が実力以上に多く見える
- 3年目に、2年目の儲けに対する請求がまとめて来る。3月所得税・6月住民税・7月11月予定納税・8月11月個人事業税
- あはき業の個人事業税は第三種事業で3%。事業主控除290万円
- 消費税は2年前の課税売上1,000万円超で判定。保険施術は非課税、自費が課税売上
- 2割特例は個人事業者なら2026年分まで。2027年・2028年分は3割特例(個人事業者のみ)
- 基礎控除は2026年分104万円。青色申告特別控除は2027年分から75万・65万・10万円に
儲かった年と、払う年がズレている。
それだけの話なんですが、知らないと通帳を見誤ります。
僕は税理士ではなく、一事業者です。あくまで自分の経験をもとにお伝えしているので、個別の判断は税理士さんに確認してください。ただ、この「ズレ」の構造だけは、本当に開業する前に知っておいたほうがいい。僕みたいに、3年目と5年目に苦しまないように、ぜひ準備をしていってください。
これから、こういった話もしていきたいと思います。
用語
- 所得:売上から経費を引いた儲け
- 課税所得:所得から各種控除を引いた、税率をかける土台
- 累進課税:所得が多いほど税率が上がる仕組み(5%〜45%・7段階)
- 復興特別所得税:所得税額の2.1%を上乗せ。2037年まで
- 予定納税:前年の所得税が15万円以上のとき、当年分を7月・11月に前払いする制度
- 事業主控除:個人事業税で年間290万円を差し引く枠
- 第三種事業:個人事業税の区分。あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師は税率3%
- 基準期間:消費税の課税判定に使う、2年前の期間
- 特定期間:前年1〜6月の課税売上と給与支払額で判定する例外
- 免税事業者/課税事業者:消費税の納税義務がない事業者/ある事業者
- 2割特例・3割特例:インボイス登録で課税事業者になった小規模事業者の納税額を、売上税額の2割/3割にする措置
- 基礎控除:誰でも使える所得控除。2026年分は最大104万円
- 青色申告特別控除:複式簿記+e-Taxで最大65万円(2027年分から要件により75万・65万・10万円)
- e-Tax:国税電子申告・納税システム
- 優良な電子帳簿:訂正・削除の履歴が残るなど、一定の要件を満たした帳簿
出典
- 国税庁 No.2260 所得税の税率
- 国税庁 No.2040 予定納税
- 国税庁 No.1199 基礎控除/令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
- 国税庁 No.2072 青色申告特別控除
- 国税庁 No.6501 納税義務の免除/No.6201 非課税となる取引
- 国税庁 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
- 財務省 令和8年度の税制改正(パンフレット・PDF)
- 千葉県 個人の事業税
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税理士は話してくれていた。でも、実感が湧いていなかった。
僕がつまずいた順番のまま、先に置いておきます。
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矢上真吾について
鍼灸師歴24年/合同会社e-life代表/和からだみなおし処 院長/著書5冊。
Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府のトレーナーを10年務め、千葉県館山市で開業13年目。一人治療家のAI自立化サポートを本気でやっています。