あはき法の教科書を売っている院の前に、違反ののぼりが立っていました

はじめに|完璧だな、と思っていたところでした

こんにちは、矢上真吾です。

合同会社e-lifeの代表をしております。ひとり治療院AI自立化サポートをやっている鍼灸師です。

昨日、僕は『あはき法の教科書』という教材の話をしていました。自分で作って、Brainと自分のホームページで売っている教材です。

その翌日、つまり今日、その教材を売っている僕の院の前に、あはき法違反ののぼりが立っていることに気づきました。

今日はその話です。あまり格好のいい話ではありません。

※ この記事は、ポッドキャストで話した内容を記事にしたものです(Spotifyで聴く)。

1. この1ヶ月、あはき法の勉強しかしていませんでした

きっかけは法人成りでした。

合同会社にしたので、廃業届と開業届を出し直さなければいけません。その届出を持って保健所に行ったときに、広告ガイドラインを見せていただいて、表記のことを指導されました。

そこから表記を直しはじめて、せっかくなのであはき法をもう一度きちんと勉強し直そう、と思ったんです。

あはき法だけではありません。景品表示法も、薬機法も、自分たちに関わってくる関係法規をひととおり読みました。

学んだからには、成果にしようと思いました

学んだ内容を、そのまま教材にしました。

僕と同じようなおっちょこちょいというか、知らないまま違反してしまっている方もいるだろうな、と思ったからです。

そこまでやったので、正直に言うと、もう完璧だなと思っていました。

さらに、その教科書のフロントとして、ペーパーバックまで出そうとしています。『その看板あはき法に通りますか』という本です。いま最終チェックの段階まで来ています。

これで完璧だな、と思っていたところでした。

2. 後輩の投稿に「なぜ僕はのぼりを出さないのか」と書いてありました

あはき法第7条は限定列挙。書いていいものだけを並べて、それ以外は全部だめ

館山に住んでいる後輩の鍼灸師が、投稿をしていたんです。

「なぜ僕はのぼりを出さないのか」という話でした。あはき法の広告制限について書いてある投稿です。

あれ、と思いました。のぼり。僕、出してるんですよ。

ただ、最初にその投稿を見たときは、正直そこまで刺さっていませんでした。「あ、この子もこういうこと書いてるんだな」くらいの感想だったんです。

自分ののぼりを思い浮かべたときに、こう思ったからです。

いや、うちののぼりは鍼と灸のことしか書いていないはずだな、と。

3. 今日見たら「冷え性・肩こり改善に」と書いてありました

今日、外に出て、のぼりを見ました。

思いっきり書いてありました。「冷え性・肩こり改善に」。

広告違反でございます。はい。

あはき法の第7条は、限定列挙という作りです

この条文は、書いてはいけないものを並べているのではありません。書いていいものだけを並べて、それ以外は全部だめ、という作りになっています。

並んでいるのは、この4つです。

  • 施術者である旨、ならびに施術者の氏名および住所
  • 第1条に規定する業務の種類(あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう)
  • 施術所の名称、電話番号、所在の場所を表示する事項
  • 施術日または施術時間

そして5つ目に「その他厚生労働大臣が指定する事項」があり、その中身が告示で9つ決まっています。

  1. もみりようじ
  2. やいと、えつ
  3. 小児鍼
  4. 届け出ている施術所である旨
  5. 医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る)
  6. 予約に基づく施術の実施
  7. 休日または夜間における施術の実施
  8. 出張による施術の実施
  9. 駐車設備に関する事項

これだけです。

「冷え性」も「肩こり」も「改善に」も、どこにも入っていません。

のぼりは、まぎれもなく広告でした

ホームページは原則対象外。院の外に出ている表示物は広告に該当する

ここは誤解されやすいところなので、はっきり書いておきます。

広告ガイドラインの上では、ホームページやSNSは、原則として規制対象の広告には該当しません。相手が探しに来て、自分で開いて読むものだからです。

のぼりは違います。

のぼりは院の外に出ている、物理的な表示物です。通りかかった人の目に飛び込みます。相手が探しに来たわけではありません。院の名前が書いてあるので特定性もあるし、来てほしいと思って出しているので誘引性もある。

指針が挙げている広告の媒体の例にも、ポスターと看板が並んでいます。のぼりは、その仲間です。

つまり、ホームページに書いていいことと、のぼりに書いていいことは、まったく別なんですね。僕はそれを教材に書いておきながら、自分ののぼりに当てはめていませんでした。

4. 毎日見ているのに、読んでいませんでした

いちばん恥ずかしいのは、そこじゃないんです。

僕、毎日そののぼりの横を通っているんですよ。毎日見ているのに、見ようとしていなかった。目には入っていたけれど、読んでいなかった。

『あはき法の教科書』を出している人間が、思いっきり広告違反をしていた。恥ずかしいったらありはしません。

のぼりは、もう文字ではなくなっていました

なぜ読んでいなかったのか、あとから考えました。

たぶん、あののぼりは僕にとって、もう文字ではなくなっていたんだと思います。

立てたのはずいぶん前です。毎日そこにあって、毎日通る。そうすると、風景になります。風景は読みません。

自分の院のもので、自分が発注して、自分が立てたものなのに、いちばん見ていない。

危ないのは、知らないことじゃないんですよね。見慣れていることのほうが、よっぽど危ない。

5. 自分の本に「まだ見つかっていないものが絶対にある」と書いていました

ホームページは氷山の一角。水面下にシステム・プラットフォーム・紙もの、そして見落としたのぼり

もっと間抜けな話があります。

いま最終チェックをしているペーパーバックの第5章に、僕はこう書いているんです。

ホームページの中に旧表記が何箇所残っているのかを数えたら、121件あった。でもこれはホームページだけの数字で、ホームページの外にまだある、と。

そこで、思いつく限り書き出しました。

  • 自分で作ったシステム:LINEの予約Bot、応答メッセージの画像、症状ページを自動生成しているスクリプト
  • 外のプラットフォーム:Googleビジネスプロフィール、YouTubeの概要欄、各SNSのプロフィール、Amazonの著者ページ、掲載ポータル
  • 紙のもの、現物:看板、名刺、回数券、初診資料、メニュー表、受付マニュアル、ブランドガイド

そのうえで、こう書きました。

まだ見つかっていないものが、絶対にある。

書いたとおりでした。

そのリストに、のぼりは入っていなかったんです。

自分で「絶対にある」と書いておいて、その絶対にあるやつが、自分の院の前に立っていた。計画性も何もあったものじゃないな、と思います。

6. 看板より先に、いますぐ抜けるものを見ていませんでした

直す順番。今日すぐ動かせるもの、今週動かせるもの、お金と時間がかかるもの

看板は、まだ変えていません。業者さんに頼まないといけないので、お金も時間もかかります。

でも、のぼりは違います。自分で抜けます。

今日、抜きました。いまは、広告として問題のない文言ののぼりを探しているところです。

看板という大きくて動かしにくいものに気を取られて、自分でいますぐコントロールできるところを見ていなかった。順番として、そこが逆でした。

直すものが山ほどあるとき、人はいちばん大きいものから考えます。でも大きいものは、たいていお金と時間がかかるので、すぐには動きません。動かない案件を眺めているあいだ、今日抜けるものが今日も立っているわけです。

7. 「じゃあ、なんで売ってるんですか」

この話をしたら、質問してくれた方がいました。

それ、なんで売ってるんですか、と。違反になる文言ののぼりが、なぜ普通に販売されているのか、という意味です。

そうなんですよね。でも、それはこちらでコントロールしなきゃいけないことだと思っています。

のぼりを作って売っている方が、全員あはき法を熟知しているわけではありません。熟知している必要もないと思います。僕らは、その法律の中で仕事をしている側です。

売っているから大丈夫だろう、というのは通りません。サービスが存在することと、そのサービスが法律に沿っていることは、別の話です。

集客の講座やコンサルにも、たぶん同じことが言えます。そこを熟知していない方はいると思いますし、知っていてあえて守らない、という人もいるかもしれません。

そういうものに引っかからないためにも、自分が知識を持っていて、その知識を使える状態にしておく。僕らに求められているのは、そこなんじゃないかと思います。

どの口が言ってるんだ、という話ですけどね。

8. 一人だと、誰も指摘してくれません

今回いちばん考えたのは、ここでした。

僕の院にはスタッフがいます。でも、経営の決定をしているのは僕一人です。のぼりの文言を決めたのも僕ですし、それを直すかどうかを決めるのも僕です。

僕が見落としたら、そこで終わりなんです。誰も「それ、まずくないですか」と言ってくれません。

今回それを言ってくれたのは、館山に住んでいる後輩でした。しかも、僕に向かって言ったわけじゃない。自分の投稿として、自分の考えを書いていただけです。

それが回り回って、僕ののぼりを抜かせました。正直、めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど、ありがたかったです。

一人でやるというのは、こういう指摘を自分で取りに行かないと届かない、ということでもあります。

  • 同業の発信を見る
  • 保健所に電話する
  • 自分より若い人が書いていることを、ちゃんと自分に当てはめて読む

これをやめた瞬間に、僕の院は「僕が見えている範囲」で止まります。

9. 追記が1つ増えました。そして、出す予定の本が3冊あります

というわけで、本の追記が1つ増えました。最終チェックまで来ていたところに、書くべきことが増えたわけです。

でも、これはこれでいい追記になると思っています。自分で書いた「まだ見つかっていないものが絶対にある」を、自分で証明してしまったので。

1冊目|その看板あはき法に通りますか

保健所とのやりとりから、自分が何をどう直してきたかを書いた本です。広告とは何か。ホームページは大丈夫なのか。SNSは。これはダメなんだ、というところをまとめています。

いくらサービスがあったとしても、そのサービスが法律に沿っているかどうかは、また別の話です。そこを一冊ぶん、通しで書きました。

2冊目|あん摩マッサージ指圧師という仕事

あん摩マッサージとはどんなもので、どんな技術で、そのルーツはどこにあるのか。改めて辿ってみたので、それを3万字ほどの短い本にまとめます。

以前『本当に鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師になってはいけないのか』という本を出しました。そこからさらに自分の仕事について学び直してみると、非常によい資格だなと、素直に思いました。

広告のところではたしかに窮屈な思いをします。それでもなお、自分たちが学んできたものは素晴らしいと僕は思っています。

3冊目|子ども向けの、身体の本

これは自分の息子に読んでほしい本として書きます。

今日の朝、息子に「お前に読んでほしい本を作るから」と言ったら、「あ、いいや」と言われました。1月に作ったときはちょっとテンションが上がってくれたんですけどね。8ヶ月経つと、そうなるみたいです。

それでも、作って残しておくことが大事かなと思っています。

うちの親父は文章を書いて残してくれた人で、それがいまも残っているんです。僕もいろいろな形で残してはいますが、子どもに向けて書いたものはまだありません。そこを作っていこうと思います。

まとめ|見慣れているものが、いちばん危ない

  1. 『あはき法の教科書』を出した翌日に、自分の院ののぼりが広告違反だと気づいた
  2. あはき法第7条は限定列挙。書いていいものだけが並んでいて、それ以外は全部だめ
  3. ホームページは原則として対象外。でものぼりは院の外に出ている表示物なので、広告に当たる
  4. 毎日その横を通っていた。見慣れたものは風景になり、風景は読まない
  5. 自分の本に「まだ見つかっていないものが絶対にある」と書いていて、そのリストにのぼりが入っていなかった
  6. 看板より先に、今日すぐ抜けるものから手をつけるべきだった。順番が逆だった
  7. 売っているから大丈夫、は通らない。サービスの存在と、法律への適合は別の話
  8. 一人でやっていると誰も指摘してくれない。指摘は自分で取りに行くしかない
危ないのは、知らないことじゃないんですよね。
見慣れていることのほうが、よっぽど危ない。

なお、この記事は僕が自分の院で起きたことを書いているだけで、法律相談ではありません。個別の可否は、最終的に所轄の保健所・都道府県の判断になります。

ただ、論点を整理してから電話するのがいちばん速い、というのは今日もあらためて思いました。

間違ったら即修正。認めて、すぐ直す。それだけが取り柄なので、今日ものぼりを抜きました。明日はどこかで、また何か見つかると思います。

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僕が見落としたところを、先に置いておきます。

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矢上真吾について

鍼灸師歴24年/合同会社e-life代表/和からだみなおし処 院長/著書4冊。
Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府のトレーナーを10年務め、千葉県館山市で開業13年目。一人治療家のAI自立化サポートを本気でやっています。