届出と実態が、ズレたままでした|あはき法の教科書を作りました

はじめに|保健所に、屋号の「整体」を指摘されました

こんにちは、矢上真吾です。

合同会社e-lifeの代表をしております。ひとり治療院AI自立化サポートをやっている鍼灸師です。

『あはき法の教科書』という教材を出しました。今日はその話をします。

ただ、教材の紹介をしたいというより、なぜ13年目にこれを作ることになったのか、そこを書き残しておきたいと思っています。あまり格好のいい話ではありません。

きっかけは、法人成りでした。合同会社にして、届出を出しに保健所へ行ったんです。

そこで指摘を受けました。表記に「整体」という文字が入っています、と。

そこから表記を直していきました。直しながら、せっかくなのでもう一度あはき法を勉強し直そうと思って、その勉強した内容をまとめたものが今回の教科書です。

※ この記事は、ポッドキャストで話した内容を記事にしたものです(Spotifyで聴く)。

1. 届出は資格どおりに出しました。それでも3年間、勘違いされ続けました

開業したとき、僕は保健所に「鍼灸マッサージ」で届出を出しています。

はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師。持っている資格をそのまま書いて出しました。ここは何も曲げていません。

そうしたら、最初の3年間くらい、ずっともみほぐしのお店だと勘違いされていました

電話が鳴って、出てみると、求めているものが違う。来ていただいても、たぶんお互いにとって良い時間にはならない。そういうことが続きました。

癒しが、得意ではありませんでした

もみほぐしを求めて来られる方は、癒しを求めていると思うんです。

僕はそれが得意ではありませんでした。不調を改善するということを、ずっとやってきた人間だったからです。

Jリーグの現場に10年いて、そこでやっていたのは選手のコンディションを整えることでした。気持ちの良さを求める施術というのは、正直、僕の土俵ではなかったんですね。

だから、来ていただいた方に満足していただけない。こちらも力を出せない。誰も得をしていませんでした。

時間で料金が決まる、というのがどうしてもできませんでした

もうひとつ、噛み合わないところがありました。料金の決め方です。

癒しが目的なら、時間で決まりますよね。60分いくら、90分いくら、120分いくら。長くいるほど気持ちよくて、長くいるほど高い。これは筋が通っています。

でも、不調を正すことを狙いにすると、時間で決めるのがすごく難しい。

  • 長くやれば効果が出るかというと、そんなことはない
  • 施術は刺激なので、身体には負担がかかる
  • 長くやるほど、かえって不調が悪化する可能性がある

なのに、時間が長くなるほど料金が上がる。不調を改善することを狙った施術としては、あり得ない設計になってしまうんです。

だから僕は、時間課金の看板を掲げられませんでした。掲げられないのに、時間課金のお店だと思われ続けていた。ここがミスマッチの正体でした。

2. 名前を変えたら、その電話がパタッと止まりました

届出と実態のズレ。開業〜3年は一致、その後10年はズレ、13年目に戻した

それをどう解決したか。

僕は名前を変えました。「はりきゅう整体院」と名乗ったんです。

そうしたら、こうパタッと止まったんですよ。勘違いの問い合わせが、本当に、ぱたっと。

あ、これでいけるな、と思いました。問題が解けた感覚がありました。

それを、10年続けました

でも、これはもちろん違反です。

「整体」は、僕が持っている資格の名前ではありません。届出にも書いていません。それを分かったうえで、そのまま10年続けました。

言い訳はあります。食べていかなければいけない、というのは本当にありました。効果もありました。

でも、やっぱりダメなんですよね。そこは、はっきりダメでした。

3. 僕が間違えたのは、原因ではなく対処のほうでした

ミスマッチへの対処は2つあった。名乗りを変えるか、説明を繰り返すか

いま振り返って思うのは、こういうことです。

ミスマッチが起きていること自体は、ちゃんと分かっていた。見立ては合っていたんです。間違えたのは、そのあとの対処のほうでした。

僕がやるべきだったのは、説明を繰り返すことだったと思っています。

  • 自分がやれること、やれないこと
  • なぜ時間で料金を決めないのか
  • うちに来ると何が起きて、何は起きないのか

これを、来る人にも、来ていない人にも、丁寧に、何度も説明する。

地味です。すぐには効きません。名乗りを変えるのに比べたら、圧倒的に遅い。

でも、名乗りを変えるというのは、要するに説明をやめる方法なんですよね。説明しなくても伝わる言葉を、外から借りてきただけでした。

借り物なので、いつまでも自分の言葉になりません。その10年で、僕の口から出てくる説明はほとんど上達しませんでした。そこがいちばん損をしたところだと思っています。

4. 13年やって、自分の職業を定めている法律を通しで読んでいませんでした

指摘を受けて表記を直しはじめたとき、気づいたことがあります。

僕は13年やってきて、自分の職業を定めている法律を、通しで読んだことが一度もありませんでした。

学生のときに関係法規はやっています。みんなやっています。でも、開業したあとに読み返したことがなかった。

第1条を読み直しただけで、勘違いが3つ出てきました

「業とする」の分かれ目はお金ではなく、反復・継続の意思

あはき法の第1条は、こう書かれています。

医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

当たり前のことが書いてあります。でも、読み直すと引っかかるところが3つ出てきました。

① 「鍼灸師」という免許は、ここに存在しません。

あるのは、はり師免許と、きゅう師免許です。別々の免許で、別々の国家試験です。みんな鍼灸師と言いますよね。僕も言っていました。

② 「業とする」は、お金の話ではありません。

僕はずっと、お金をもらったら業だと思っていました。違いました。お金をもらっていなくても、これから繰り返すつもりがあるなら業に当たります。

「無料でやるなら免許はいらない」というのは通りません。判定に使われるのは、対価の有無ではなく反復・継続の意思のほうです。

③ 「医師以外の者で」と書いてあります。

つまり医師は、この免許なしでできる。ここも、言われてみればそうなのですが、意識したことがありませんでした。

条文をひとつ読み直すだけで、これだけ出てくるんです。

あん摩マッサージ指圧の中には、「整体」がもともと入っていました

読み直して、もうひとつ分かったことがあります。

あん摩マッサージ指圧は、素晴らしい仕事だということです。

指圧のなかには、アメリカのカイロプラクティックやオステオパシーの流れが入っています。つまり僕が「整体」という言葉で外から借りてきたものは、もともと自分の資格の中に入っていたんですね。

借りる必要が、そもそもなかった。

いま僕は、表記を「鍼灸マッサージ」に戻しています。やることは何も変わりません。身体をより良い方向に持っていく。そこは1ミリも変わらない。

変わったのは、自分の看板を自分の資格で説明できるようになったことだけです。でも、この「だけ」がけっこう大きかったと感じています。

5. 保健所は、構える相手ではありませんでした

もうひとつ、はっきり間違っていたことがあります。保健所に対する見方です。

僕はずっと、指導をする人たちだと思っていました。だから変に構えていました。何か言われないように、先に対策を取っておこうかな、みたいな。そういう相手だと思っていたんです。

違いました。

保健所には窓口があって、こちらが悩んでいることに親身に答えてくれます。「これは確認しましたけど大丈夫です」と、はっきり言ってくれる。より良い方向も提示してくれる。

地域の状況を良くしていこうという、同じ方向を向いた人たちでした。大げさに言えば、同志みたいな方々です。

指摘を受けたあと、僕は何度も何度も電話をして問い合わせています。

そもそも13年やってきて、専門機関としっかりタッグを組むということを、僕はやってきませんでした。いま13年目にして、それをやっている最中です。

自分で勉強をして、かつ専門機関と組む。これが、これからより大事になってくるのかなと思っています。

6. 届出と実態がズレている人は、たぶん少なくない

これは結構いると思うんです。届出と実態が違う人。そのままにしている人。

指導されるまではこのままでいよう、と考えている人もいるかもしれません。

でも、もう見えているんですよね。届出は保健所に出してあります。だから、いつでも指導ができる状態です。

そして令和7年2月に、あはき・柔整の広告ガイドラインが出ました。あれが出た時点で、明らかに潮目が変わっていると思います。

届出と実態を合わせにいくのは、これから必須になってくるのかなと感じています。

僕は10年ズラしたまま走りました。直すのに時間がかかりました。早いほうがいいです。

7. その勉強を、そのまま『あはき法の教科書』にしました

勉強し直した内容を、まとめて教材にしました。

正式名称は「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」です。本則と附則をあわせた60の条すべてを、1レッスン1条で。施行規則と施行令も入れて、113レッスン、約3時間44分です。

条文が読みにくいのには、理由がありました

条文って、読みにくいですよね。僕もそうでした。いま45歳ですが、文章が古くて、何が書いてあるのか頭に入ってこない。

読んでみて、いちばん驚いたのは条文の中身ではなく、読みにくさに理由があったということでした。

この法律は昭和22年に「営業法」として生まれて、名前が3回変わって、昭和63年の大改正で条文がまるごと増築されています。だから「第3条の2」から「第3条の25」まで延々と続いて、並び順が重要度の順になっていません。

読みにくいのは、読む側のせいじゃないんです。

なので、読み方のほうを先に渡してしまおう、という作りにしました。

中身(12コース・113レッスン)

  • はじめに|この法律の成り立ち(10レッスン)
  • A 資格の土台|自分が何者かを定める条(3レッスン)
  • B 名簿と免許の手続(3レッスン)
  • C 試験・登録の事務|読み飛ばしてよい条文群(22レッスン)
  • D やってはいけないこと|業務範囲の外縁(3レッスン)
  • E 広告と守秘義務|いちばん効くところ(2レッスン)
  • F 施術所|開業するなら必読(8レッスン)
  • G 無資格との線引き|すべての揉め事の震源地(3レッスン)
  • H 行政の権限と罰則(10レッスン)
  • I 附則|本則より重い規定がここにある(6レッスン)
  • 施行規則|実務の細部はここにある(29レッスン)
  • 施行令|手数料と認定の手続(14レッスン)

「読み飛ばしてよい」と書いてある章があります。試験機関の事務を定めた22条分で、開業している側にはまず関係しません。読まなくていい場所を先に教えるのも、教科書の仕事だと思っています。

つまずきやすいところには、つまずきポイントとして先回りしてあります。さきほどの「無料ならいらないんじゃないか」も、そのひとつです。

各章の入口には四コマを置いてあって、ひとつの思い込みを条文で正すところから始まります。

どこで買えるか

入口は2つあります。

Brain版。こちらは紹介アフィリエイトが付いているので、2人の方に紹介できたら元が取れるくらいになっています。おすすめはこちらです。

📚 あはき法の教科書(Brain)

e-life版。当サイトの販売ページから直接お求めいただけます。

📚 あはき法の教科書(e-life)

どちらも買い切り2,980円です。飲み会1回にも届かない金額で、自分の職業を定めている法律をおさらいできると考えると、悪くないと思っています。

法改正があったときは追記して更新します。追加料金はかかりません。

第2条・第3条までは無料で読めるので、雰囲気はそこで掴めると思います。

正直に、線を引いておきます

これは法律相談ではありません。あくまで僕が条文と、国が出している指針・告示・判例を読み解いた教材です。

個別の可否は、最終的に所轄の保健所・都道府県の判断になります。最後はきちんと法律の専門家に当たる必要があると思います。

ただ、論点を整理してから電話するのがいちばん速い、というのは実感としてあります。何を聞けばいいか分からないまま電話しても、話が進まないんですね。

このあとは、景品表示法や薬機法など、自分たちに関わってくる近い法律も出していこうと思っています。

まとめ|13年目に読んだ人間が言うので、早いほうがいいです

  1. 届出は資格どおりに出したのに、実態はもみほぐし店だと思われ続けた。ミスマッチは実在した
  2. 名乗りを「はりきゅう整体院」に変えたら、勘違いの問い合わせはパタッと止まった。でもそれは違反だった
  3. 間違えたのは見立てではなく対処。やるべきだったのは、説明を繰り返すことだった
  4. 名乗りを借りるのは、説明をやめる方法。借り物なので、10年経っても自分の言葉にならない
  5. 第1条だけで勘違いが3つ出た。「業とする」はお金ではなく、繰り返すつもりがあるかどうか
  6. 「整体」の中身は、あん摩マッサージ指圧にもともと入っていた。借りる必要がなかった
  7. 保健所は構える相手ではなく、同じ方向を向いた窓口だった
名乗りを変えるというのは、説明をやめる方法でした。
説明しなくても伝わる言葉を、外から借りてきただけです。
借り物なので、10年経っても自分の言葉にはなりませんでした。

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矢上真吾について

鍼灸師歴24年/合同会社e-life代表/和からだみなおし処 院長/著書4冊。
Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府のトレーナーを10年務め、千葉県館山市で開業13年目。一人治療家のAI自立化サポートを本気でやっています。