
はじめに|あはき法ではOKでも、景表法では違う
こんにちは、矢上真吾です。
ひとり治療院AI自立化サポートをやっている鍼灸師です。今日は、あはき法でも柔整の法律でもない、もう一つの法律の話をします。景品表示法、略して景表法です。
先に結論だけ言っておきます。「ホームページは広告に当たらないから、多少は自由に書ける」という整理は、あはき法の話であって、景表法では通りません。
あはき法ではOKでも、景表法では違う、ということがいろいろあります。だから、ちょっと気をつけていきましょう、という話です。
1. 「広告」と「表示」は、範囲が違う

あはき法の「広告」は、3つの要件で決まる
令和7年2月18日の広告ガイドラインは、「広告」を三つの要件で決めていました。誘引性、特定性、認知性。この三つがそろって初めて、広告になります。
この物差しでいくと、自分の院のホームページは、原則として広告に当たらない、という整理になります。ここまでは、あはき法の広告の回で話したとおりです。
景表法が使う言葉は「表示」
ただ、これはあはき法の話です。景表法が使う言葉は、「広告」ではなく「表示」です。範囲が違います。
景表法の2条4項を受けた告示、昭和37年6月30日の公正取引委員会告示第3号には、こう並んでいます。
見本、チラシ、パンフレット、説明書面。ダイレクトメールやファクシミリによるものも含む。
口頭による広告その他の表示、電話によるものも含む。
ポスター、看板、新聞、雑誌、放送。
口頭が入っているんですね。だから、受付での説明も「表示」になります。ホームページも、SNSも、料金表も、当然に入る、ということです。
2. 二つの法律は、逆を向いている

ここは、いちばん多くの人がつまずくところだなと思います。理由は、二つの法律が逆を向いているからです。
あはき法7条は「書いていいこと」を並べる
あはき法の7条は、書いていいことを並べて、残りを禁止する形でしたよね。いわゆるポジティブリストです。だから問いは、「これは許された項目のどれに当たるか」になります。
景表法5条は「嘘と大げさ」を禁止する
景表法の5条は、嘘と大げさを禁止する形です。問いは、「これは実際より著しく良く見せていないか」です。

両方が同時にかかる
そして、この両方が同時にかかります。あはき法7条をクリアした表現でも、大げさなら、景表法5条で別に引っかかる。逆に、景表法的に正確でも、あはき法7条の項目になければ、広告には書けない。
片方を通ったから、もう片方も大丈夫、ということにはなりません。
窓口も違う
景表法の所管は、保健所ではありません。消費者庁と、都道府県の景表法担当です。
これは、僕らのような鍼灸・あん摩マッサージ指圧だけでなく、柔道整復師の先生にもかかってきます。あはき法は、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の法律です。ただ、景表法にその区別はありません。事業者であれば、同じようにかかります。なので、あはき法をクリアしたから大丈夫、ということにはならないわけです。
3. いちばん効くのは、罰則ではなく立証責任

制度の構造として、押さえておきたいことがあります。景表法で実務的にいちばん効くのは、罰則ではなくて、立証責任がひっくり返っていることだそうです。
7条2項|「効果があります」と書いたなら、根拠を出す
たとえば「効果があります」と書いたなら、その根拠資料を出さなければいけない。期限は、求められた日から原則15日後。不実証広告規制に関する指針の、第4の2に書かれています。
出せなければ、その表示は優良誤認とみなされます。行政が「嘘だ」と証明するのではありません。こちらが「本当です」と示せなかったら、ダメなんです。
ここから出てくる結論は、一つです。
15日で用意できないことは、書いてはいけない。
課徴金より、公表のほうが重い
課徴金は、売上額の3%です。ただ、150万円未満なら命じられないんだそうです。8条1項のただし書きに書いてあります。逆算すると、売上5,000万円です。一人でやっている治療院の規模だと、課徴金が実際に出る場面は、そんなに多くないのかなと。
残るのは、措置命令と、その公表です。商圏が狭い僕らみたいなところは、こちらのほうが重いんじゃないかなと思います。
それから、48条に、措置命令を経ずに科される罰金の規定があります。100万円以下です。実務上、いきなりここに来る例は限られるかもしれませんが、必ず先に警告がある、とは言えないです。
近年の動きが、二つ
一つ目が、ステルスマーケティングの告示です。令和5年3月28日の内閣府告示第19号が、令和5年10月1日から施行されています。患者さんへの口コミの依頼とか、スタッフや家族の投稿が、ここに関わります。
二つ目が、確約手続です。26条から33条。処分される前に、自分から直すと申し出られる道です。
気をつけていきましょう。
4. 条番号の順に読んでも、頭に入らない

では、どう読んでいくか。条番号の順に読んでも、頭に入らないです。何度も言いますが、僕は法律を読んでいると、頭が眠くなってくるので。それに、並び順が重要度の順ではないんですね。

効く順に並べると
- 2条|何が「表示」になるのか。ここを外すと、全部ずれてしまいます
- 5条|嘘と大げさの禁止。ここが本丸です
- 7条|15日で根拠を出す
- 8条|課徴金。規模の話も、正直に書いてあります
- 4条|ちょっと戻って、景品の上限。紹介キャンペーンは、ここに書いてあります
- 22条|事前に備えましょう、という条文。7条2項と地続きです
- 46条・48条・49条|罰則の全体像
課徴金の手続きにあたる9条から21条と、送達の42条から45条は、読み飛ばして構わないんじゃないかと思います。
条文が骨で、告示が肉
もう一つ。条文が骨で、告示が肉です。2条は、「内閣総理大臣が指定するもの」としか言わないんです。景品の金額も、4条には書いていない。ステマも、5条3号には書いていない。全部、告示に飛ぶわけです。告示を読まずに、景表法を語ることはできない、ということです。
裏を返すと、告示に書かれていないものは、規制対象にはなりません。5条3号は、行政が思いつきで広げられる条文ではなく、公聴会を経た告示がいります。これが6条です。
5. 条文ごとに、同じ7つの見出しを置いた

この読み方を、条文1本ずつ、そのままの形にしたテキストを作りました。条文ごとに、同じ7つの見出しを置いています。
- 一言でいうと|ここだけ読めば、その条が何を言っているかは分かります
- 現代語にすると|「左に掲げる」「乃至」「〜の外」といった古い言い回しを開きます
- 出てくる言葉|その条を読むのに必要な用語だけを、その場に
- なぜこの条文があるのか|制定の背景です。ここが分かると、条文の厳しさの理由が腑に落ちてきます
- 現場でどうなるか|開業していると、どの場面で効いてくるか
- つまずきポイント|よくある思い込みと、実際はどうか
- 一次出典|条番号、通知番号、判決の日付まで。ここから自分で確かめられます
条文は、e-Gov法令検索の現行条文をそのまま載せています。原文はいじっていません。告示と運用基準は、消費者庁の公表資料に当たっています。
6. 誰に向けたものか、そして教材であって助言ではないこと
これは、開業している先生、これから開業する先生に向けたものです。鍼灸でも、あん摩マッサージ指圧でも、接骨院でも、同じ1冊で足ります。
そして、はっきり言っておきます。これは教材であって、個別の事案についての法的な助言ではありません。この料金表示が二重価格に当たるか、この口コミの依頼がステマ告示に触れるか。具体的な当てはめには、運用に幅があります。最終的な判断は、消費者庁、都道府県の担当窓口、または弁護士等の専門家にご確認ください。
法令や告示は改正されます。本書は、執筆時点の現行条文に基づいています。判断の結果について、著者・販売者は責任を負いません。
なお、鍼灸・柔整の分野には、景表法上の「公正競争規約」がありません。36条です。業界の自主ルールで包んでもらえる分野ではない、ということです。一つひとつの表示を、法律と告示に直接当てて判断するしかありません。
景品表示法の教科書
全52条+施行令23条を逐条で。ステマ告示・不実証広告・景品の上限まで。87レッスン・約2時間6分。¥1,980(買い切り)
あはき法の教科書ではなくて、景品表示法の教科書です。鍼灸院でも、接骨院でも、同じ1冊で足ります。
まとめ|「表示」の範囲と、15日の結論

- あはき法の「広告」は3要件(誘引性・特定性・認知性)で決まり、自院のホームページは原則「広告」に当たらない。ただし景表法が使う言葉は「表示」で、告示には口頭・看板・放送まで並んでいる。ホームページもSNSも料金表も、受付での説明も入る
- あはき法7条は「書いていいこと」を並べる形、景表法5条は「嘘と大げさ」を禁止する形。向きが逆で、両方が同時にかかる。窓口も保健所ではなく、消費者庁と都道府県。柔道整復師も同じ
- いちばん効くのは立証責任の逆転。「効果があります」と書いたら原則15日で根拠を出す。出せなければ優良誤認とみなされる。15日で用意できないことは、書いてはいけない
- 課徴金は売上の3%だが150万円未満は命じられない(売上5,000万円が線)。残るのは措置命令とその公表。商圏の狭い治療院には、こちらのほうが重い
- 条番号の順ではなく、2条→5条→7条→8条の順に読む。条文が骨で、告示が肉
「ホームページは広告じゃないから自由に書ける」は、あはき法の話。
景表法では、「表示」です。
参考になれば幸いです。
用語
- 景表法(景品表示法):正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」。業種を問わず、商品やサービスを売る事業者すべてにかかる
- 表示:景表法2条4項で「内閣総理大臣が指定するもの」と定義され、中身は告示(昭和37年公正取引委員会告示第3号)が並べている。口頭・電話・看板・放送・ネットまで含む
- ポジティブリスト:書いていいことを列挙し、それ以外を禁止する方式(あはき法7条)
- 優良誤認:実際より著しく優良だと一般消費者に誤認させる表示(景表法5条1号)
- 不実証広告規制:7条2項。表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求め、出せなければ優良誤認とみなす仕組み。期限は原則15日(指針 第4の2)
- 課徴金:8条。対象の売上額の3%。150万円未満なら命じられない
- 措置命令:7条1項。違反行為の差止め・再発防止などを命じる行政処分。公表される
- ステマ告示:令和5年3月28日内閣府告示第19号。事業者の表示なのに第三者の表示に見せかけるものを5条3号の不当表示に指定。令和5年10月1日施行
- 確約手続:26〜33条。違反の疑いを通知された事業者が、自分から是正計画を出して認定を受ければ、措置命令・課徴金を受けない仕組み
- 公正競争規約:36条。業界が自主ルールを作って認定を受ける仕組み。鍼灸・柔整の分野には存在しない
出典・条文の出どころ
- 不当景品類及び不当表示防止法(e-Gov法令検索・現行条文)(2条4項・5条・6条・7条・8条・22条・26〜33条・36条・46条・48条・49条)
- 「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」昭和37年6月30日 公正取引委員会告示第3号
- 「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針―不実証広告規制に関する指針―」(提出期限は第4の2)
- 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」令和5年3月28日 内閣府告示第19号(ステマ告示・令和5年10月1日施行)/同 運用基準(消費者庁)
- あはき法・柔道整復師法の広告ガイドライン(令和7年2月18日・厚生労働省)
※ 執筆時点(2026年9月)の現行条文と公表資料に基づいています。法令・告示は改正されます。個別の当てはめは、消費者庁・都道府県の担当窓口または弁護士等の専門家にご確認ください。
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矢上真吾について
鍼灸師歴24年/合同会社e-life代表/和からだみなおし処 院長/著書5冊。
Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府のトレーナーを10年務め、千葉県館山市で開業13年目。一人治療家のAI自立化サポートを本気でやっています。